A 西宮学生ボランティア交流センター
委員:西宮学生ボランティア交流センターは、震災の時に数多くの学生ボランティアが救援活動に立ち上がったのを受けて、ロータリークラブからの7000万円の寄附を基金にして西宮市内の10大学をベースに立ち上がった。インターネットによる情報提供と約200名の登録学生に対するマッチングを行っている。スタッフは2名で一人は市のOBである。現在は市の分庁舎に事務所をおいているのだが、将来的には西宮市のカレッジタウン構想に基づいて開設される学生交流センターに移転する予定である。行政の支援のあり方について尋ねたところ、行政と市民とボランティアが相互に協力し合うことを前提として、事業経費は自分たちで調達するから、人件費等間接的な経費を行政が負担し、かつ運営には口を出さないことが望ましいということであった。また、行政に対しては、「○○をしてはいけない」といわないこと、各種申請書等の簡素化を求めていた。今後、注目したいのは、活動資金をどうしていくか、また西宮北口に戻った時に、学生がセンターにどう関わって、どうボランタリーなネットワークや働きを自ら形成するかということだ。
B 赤穂ボランティア協会
委員:昭和58年4月に赤穂市の福祉会館の開設をきっかけとして、それまでバラバラに活動をしてきたボランティアグループが集まって協会を設立した。当初は、福祉会館の中に事務所をおいていたが、市と社協の補助事業が活動の中心となってしまうのと、会館の管理面で使い勝手がよくなかったことなどから、外部の事務所で活動をするようになった。現在、市と社協からの補助金は当初の2分の1であり、市から無償で借りている事務所で、ボランティア活動のマッチング、毎年開催する交流イベント事業、各グループへの助成金の配分等を行っている。26加盟団体は協会と社協ボランティアセンターの両方に登録して活動をしており、協会から各団体へ1万円の活動助成及び研修事業等に対する助成を行っている。当初は、民間主導型で非常に良いスタートをきったのだが、現状のようにサラリーマンの事務局長とアルバイト1名の状況では、事務局主導型の活動はなかなかできにくい。こういうセンターにとっては、やはり、事務局スタッフが非常に重要であり、自主財源の充実が必要であると感じた。他の地域の団体とも個別にネットワークを組んではいるが、なかなか他の団体の活動情報等が入って来ないということであった。県の支援センターには、そういう情報の集約と提供、さらに研修機会の確保を求めていた。
C 佐用町ごみ仲間
委員:佐用町は人口9000人、高齢化率が平均で27%の町である。県の生活科学センターの事業であるくらしのクリエーターの2人と婦人会活動をしていた1人の3人の女性が中心となって始めた活動で、町が事務局をし、町の保健センターを活動拠点としている。ごみの分別等ごみの減量化について関心をもったのをきっかけであり、生活の周辺からごみを出さない、捨てない、焼かないということをスローガンにして取り組んできた。空き缶の回収、店舗へのトレイ回収箱設置依頼、紙パックによる紙漉き、廃油を利用した石鹸づくり、リサイクル会による啓発事業等さまざまな活動に取り組み、現在はEMボカシによる生ゴミのコンポスト化に取り組んでいる。婦人会の組織がなくなっていたので、小中学校でリサイクル教室などの啓発事業を行うとともに、市広報や有線放送を活用して町民へ情報提供をした。活動の成果について、広域行政で行われているごみの量が十分に把握できないため、数量的な効果が把握できないのが課題である。また、若い人に活動に参加してほしいという意向があるが、なかなか参加してもらえていない。これは、集落ごとに積み上がっていく町のシステムが男性中心であって、女性の声が反映しにくくなっている。このように、女性が生活上の課題に敏感に反応しても、それが十分に広がっていかないシステムが農村部の女性の活動が行き詰まる原因ではないか。一方、町行政はこの活動に対して主導的にリーダーシップを果たしているというより、逆にかなり一体化していた。このため、グループの費用については年間10万円くらいしかかっていないが、現実には、町が支援している部分を計上していくとかなりの額になる。さらに、町から独立して活動することについては、自分たちの仕事が増えるので望んでいなかった。
委員:ここでは、これが行政の仕事の範囲を逸脱しているかどうかはわからないが、町が事務局をしてかなり深いところまで活動を支援していた。全国各地を見ても行政単位が末端に行けば行くほど、行政が住民活動の事務局をしたり、個人として事務局に関わるというのが非常に多くある。このように住民の活動に行政が関わることが行政の下請けにつながるという教条的な図式が必ずしも当てはまらない、逆に行政が住民の下請けをしている形が行政の末端に行けば行くほど随分ある。県の単位で行政と市民活動と言うと、大上段に振りかぶった議論になるのだが、活動を現地に下ろしていくことで本当に住民のためになる活動が行政と一体となってできるのかなと考えている。
D 質疑応答
委員長:ヒアリング結果について、何か質問はないか。
委員:全体に共通している課題として財源の問題があると思う。補助金や寄附等をもらっていても、これが活動のプラスにはなるのだろうか。また、行政との関係については、先程の意見でまとめることができると思うが、学生は本当にボランティアと言えるのだろうか。
委員:率直に言うと同じ意見である。学生ボランティアの場合、事務局長は市のOBだが非常にしっかりしたスタンスを持っておられ、この方には問題はないのだが、学生のセンターへの関わり方、7000万円の基金と市行政との関わり方からすると、直接公金が使われていないとは言え、その他の支援の内容からすると、少しオーバープレゼンスではないかという気がしている。
委員:赤穂の場合も、やはりボランタリー活動というのはハングリーでないといけない。飢え死にしてしまってはいけないが、適度なハングリーさがないと上手くいかないなと感じた。しかし、資金助成をする仕事に携わったことがあるのだが、適度にハングルーにしておくというのは非常に難しいことだ。
委員:事務局を行政がしているから、行政が住民活動の下請けであるという見方もあるが、住民がお客様化しているという見方もあるのではないか。住民活動が主体化していないということであって、主体化すれば自分ですれば良いのに、なぜ行政が手伝うのだろうか。本来、行政がすべき仕事であったら行政がするべきだし、住民が良いことをしているからと言って行政が手伝って住民をお客様化することには違和感を感じる。結局、「市民」を主体とするということは、企画だけではなく、運営を推進する担い手としてどれかだけ関われるかということだと思う。そうしないと、いつまでたっても「市民」になっていけない。そういう構図があちこちにあるのではないか。
委員長:ご意見を踏まえて、これからもヒアリングを続けて行きたい。