第3回検討委員会議事要旨
※本議事要旨は事務局が作成したものに各委員が発言内容の確認を行ったうえ、委員の申し出に従い修正を行ったものです。
第4期兵庫県県民生活審議会第3回県民ボランタリー活動促進施策基本方針に関する検討委員会議事要旨
1 日時 平成11年7月9日(金)13:00〜15:00
2 場所 市立西宮市民会館3階中会議室2(西宮市六湛寺町10−11)
3 出席者
(1) 委員 今田委員、草地委員、小室委員長、鳥越委員、中村委員、早瀬委員、速水委員、山内委員、吉田委員
(2) 事務局 藤原生活文化部次長、大鳥生活創造課長
(3) 傍聴者 3名
4 議事
(1) 検討委員会の地域開催について
(2) 団体ヒアリングについて
(3) 県民ボランタリー活動の促進施策の基本方針について
(4) その他
5 主な意見
(1) 検討委員会の地域開催について
事務局:第2回検討委員会での検討結果に基づき、第3回(今回)を阪神地域として西宮市民会館で開催し、第4回西播磨地域を7月23日(金)午前中に姫路労働会館で開催する予定、第5回丹波・但馬地域として、和田山町内で8月下旬に開催するべく調整中である。
(2) 団体ヒアリングについて
@ 音訳グループ「さわらび」(川西市)
(報告)
委員:1975年設立、川西市内で約40名が活動している。主に音訳奉仕をしており、障害者のための福祉向上に寄与した活動を行っている。活動上の課題は、テープを吹き込むスタジオがないこと、機材を自己負担しなければいけないことである。また、企業との連携を図ったり、他の団体等との交流を通して活動の幅を広げられたら良いのではないかと感じた。
(質疑応答)
委員:対象となるリスナーはどのくらいか。
委員:登録リスナーが40名、登録はしていないが市の広報誌のテープを受け取っているリスナーが20名。実際にはもっと多くの視覚障害の方がおられるが、このような活動の存在をもっと知ってほしいということだった。
A 「くさのね」(加古川市)
(報告)
委員:難民の救援衣料の提供やリサイクルのはがき、障害者施設や障害者と交流支援を行っており、代表者が経営する設計会社を活動拠点に自然体の活動を行っている。全国に7500人規模のネットワークをもっている。
B 「かさい夢っ子クラブ」(加西市)
(報告)
委員:市内の自主的なサロンにおける子どもの教育問題に関する話し合いがきっかけとなって生まれた。スタッフは20名、子どもは33名で創作活動、体験活動の2本の柱で小学生の親子に参加してもらっている。財政的には赤字で、これまでは助成金があったので対応できたが、今後は自己負担を求めることが必要であろう。また、若く新しいスタッフを募集しているが、なかなか集まらないことが課題である。
(質疑応答)
委員:東播磨の2団体はどちらも独立して活動をしているが、これらに行政が関与する余地があるのか。
委員:「くさのね」については、行政が関与して代表者にさまざまな依頼をすることで本来の活動の機会を奪うことに留意してほしいということ、行政が実施する同じような施策を整理する必要があるということであった。加西は拠点となる場の提供を受けているが、それ以外は支援を受けていない。逆に、どちらも企業の持つノウハウや技術で、活動に生かせるような情報の提供があれば良いなと感じた。
委員:報告のあった団体については、拠点が確保されていたが、普通は地域に密着した拠点、リーダーシップのトレーニング、助成制度など財政的なものも含めた情報が求められている。東播磨地域では、既に市町拠点があったり、トレーニングをしていると思うが、それにプラスして県がどういう形で関与すればよいと感じたか。
委員:ボランティア連絡会やボランティアセンターの情報がヒアリング先にはつながっていない。社会教育系のボランティア活動の情報や、企業の関わり方についての情報があまりでていない。また、市町の行政で活動をバックアップする体制をできれば良いのだが、そのモデルを県が示せないか。さらに、グループリーダーの養成や組織運営の研修など個々のグループに生かせるような研修、ボランティアグループをカウンセリングする場が求められている。
委員:音訳グループでは、市の広報誌は音訳しているが、県の情報はしていない。具体的な活動の中でも地域密着型の場合、広域的な施策は必要ないのだが、そこへどう情報提供していくのかを考えることが必要だ。
委員:県の情報提供の仕方として、どこかのセクションが介在して、必要と思われる情報を整理整頓して提供することも考えられる。
委員:行政の情報は特定の人に集中するが、求めている人に上手く届かないということがよくおきる。
委員:行政がするサービスは、十分にマーケティングがなされていないということだ。
委員:ここで検討する基本方針を考えるにあたって、選択が必要にならないか。一つの選択は、県は市町の足りない部分をやるというものであり、もう一つは、県がある考え方(フィロソフィー)の下で県と市町で役割分担して、やるべきことをやるという選択である。それと、他の部局では市や町の地域を越えた、広域のものを県がやるべきであるという範域からの選択をしている。複数でもよいので、ある段階でこの中から選択をして態度を決めていく必要があるのではないか。
委員:過去にあった似た例では、兵庫県が消費者行政を全国に先駆けて先導的に取組み、各地域に生活科学センターをつくった。その結果、消費者行政は市町の地方交付税の算定基準に入っているのに、県があまりにも先行しすぎたために、市町が県の仕事であると思ってあまり取り組まなかったということがあった。その反省として、例えば、市町域を越えたものを県の消費者行政としてやるという形で整理をし直した。
委員:ネットワーク型のところは、どこの地域であるかが難しい。こういうネットワーク型で、活動の拠点がどこかわからない、あるいは全国に広がっている場合に、誰が所轄するのかという議論は馴染まない。形としてどう支援をするのかということではないか。
委員:誰が所轄するかというのではなく、県が基本方針としてどういう道を選ぶかということである。
委員:しかし、行政の発想として、所轄するというようなことになってしまわないか。
委員:支援の考え方として、活動の効果が市域や県域であるということで、それに着目して支援する考え方と、住民の社会的な自己実現活動を支援するという考え方に基づくものがある。後者は、住民がどんな活動をしようが、効果はどこに帰属しようが、市民が社会参加をすることを支援するという考え方である。
委員:囲い込まないことが必要である。さりとて、時代も変わっているので、ボランティアの側も、自由に自分たちがやっていることだから、構わないでほしいという考え方も変えないといけない。
委員:基本方針が対象としている活動はどのようなものか、もう一度整理しておきたい。例えば、個人的なもの、予算規模が小さいものが対象なのか、それとも、もう少し大規模な団体を想定しているのか。
委員:どういう団体を対象という前提条件はついていない。規模の大小、活動分野などは限定していない。
委員:限定はないといっても、どの層の活動の支援に力点を置くかで、基本方針の内容が変わってくる。今日決める必要はないが、大事なことである。
委員:ヒアリングで聞ける団体の数は限られるので、県の施策により直接的に関係を持つところをヒアリングする方が良いのかなという気がした。
委員:ヒアリングをしたのは、比較的優等生の団体であった。もちろん、県民局として、この程度の団体がNPOであるということで選んでもらったのだが、逆に、活動をしながらも悩みを抱えているような団体のヒアリングも必要ではないか。
委員:非常に活発にボランティア活動を行っている団体でも、例えば、そこの女性リーダーのご主人が定年退職して、活動に出られなくなった途端に団体の活動が低迷してしまったということがある。
委員:そういう例はよくあるが、社会的な制約があって活動できないものは別にして、自由にやっているものなので、根本的にはつぶれてしまうものはつぶれたらよいのでないか。先の例では、自分がリーダーをやっているうちに、次のリーダーをつくる体制をつくっていなかったというリーダーシップの問題である。そもそも、生存率が5年と言われる世界なので、それでもいい。次々と新しい活動が生まれてきたら良いと考えるか、せっかく善意でやっているから、必ず守らないといけないと考えるかというので随分違う。そういう見方があると思う。
委員:私は、普段からボランティアは山手線だと言っている。乗ったり、降りたり自由だが、ともかく前に行っていることがボランティアである。一度ボランティアに入ったら、何が何でも下ろさないというのは駄目だ。
ところが、行政がやると、えてして逃さないようにするために、手取り足取りかまってしまう。
(3) 県民ボランタリー活動の促進施策の基本方針について
委員長:基本方針の議論に移るが、第2回検討委員会での意見を集約した結果について説明してほしい。
事務局:【資料4説明】(省略)
委員長:基本方針の取りまとめ方について事務局の方から一つの問題の整理がでたが、今の説明について何か意見はないか。
委員:この審議会は、ボランタリーセクターの形成に力を入れていくべきだということを答申し、条例もそれを踏まえている。当然、この基本方針も、ボランタリーセクターの形成ということから始めるべきである。つまり、自主性等の抽象的な言葉から始めるのではなく、ボランタリーセクターの形成をすることから論理を組んで、その上に自主性という言葉があるという構図ではないか。
委員:第3期の答申を出すにあたって、自由とは何かとか、平等と自由はどういう関係にあるのか等かなり哲学論に踏み込んだような議論を行った。したがって、ここではあくまでも答申が前提で、哲学論にもどらず、ボランタリーな活動をどう支援していくのかという議論をしていく。
委員:ボランタリーセクターの形成というのは、兵庫県がかなり独自性を持つ、他の県では真似ができない個性的なものである。
委員:条例をつくるときも議論になったのだが、NPO法ができて他県も条例をつくっているが、それまでの議論の蓄積がないままに条例をつくっている。兵庫県の場合は、震災前からの議論の流れの中に条例があるのであり、そこが全然違う。
委員:この基本方針でも、必ず情報は大切だと書くこととなると思うが、どのへんまで書き込むのだろうか。
委員:情報が大事だと言ってきた世代は、情報化社会ということで身構えてしまったために、あまり情報を上手く使っていない。しかし、若い人はあまり意識することなく情報の中にどっぷりつかっている。だから、ことさら身構えて情報が大切だと言う時期ではなくなっているのではないか。
委員:県として情報の大切さは書くが、その程度にとどめることになるのだろう。
委員:情報という言葉が入るだけで質が落ちるということになるかもしれない。
委員:例えば、成熟社会という言葉は、非常にきれいな言葉だが、個々の活動や団体を見てみると、必ずしもまだ成熟していないのが現状である。そうすると、本格的なボランタリーセクターの形成についても、きれいな表現になるだろうが、具体的に個人から団体まで、一人一人がそれを実現していくためには、何をどう取り組むのかというと非常に難しい。しかし、それを抜きにして、取り組むことはできない。
委員:第3期の審議会で議論したのはまさにそこである。成熟社会も、例えば、一人当たりのGDPがアメリカを追い抜いた等のプラス面だけで語られるが、果たして我々は本当に豊かな社会をつくったのだろうか。あるいは、自分の生活は豊かなのか、いや違うぞというのが議論の出発点だった。
委員:県民生活審議会の議論もそうだが、県民ボランタリー活動支援センター(仮称)でも、基本的かつ大事な議論をしてきた。今回、県の基本方針を民間の我々が考えているが、どうもしっくりこない。矛盾しているのは、ボランタリーセクターの形成を支援するということは、行政と市民との関わり方をどう調整するかということなのに、そのための行政施策が必要だとなることだ。逆に言うと、行政が今までのようなオーバープレゼンスをやめますと宣言した方が、ボランタリーセクターが育ってくるのではないか。少し冗談めかして言えば、今回の基本方針も、「兵庫県が行政のオーバープレゼンスをやめます」という広報誌をだす方が、市民が考え直すきっかけになるのではないか。
委員:5年前、10年前のボランティア団体は、我々でするから行政は入ってくるなという、非常に閉鎖的な世界であった。これに対して、もっとオープンにして、行政に協力してもらうことがあったら協力してもらったら良いではないかと批判してきた。ところが、どうも震災以後、それが逆転した。これをニューボランティアと言うとすれば、ニューボランティアは行政に何をさせるかというところに議論が移っていて、ちょっと行き過ぎではないかなと思っている。
委員:主体的能動的市民参加ということを市民自身が理解しないと質の高いものは出て来ないのではないか。
委員:確かに、行政があまり出すぎる必要がないのは事実だが、一方で、あちこちヒアリングに行くと、要望が出てくるのも事実であり、自分たちの力でできないことが存在するのも事実だ。
委員:オーバープレゼンスと言った時に、オーバーしている部分をはっきりさせることが大切だ。プレゼンスは必要だ、支援は良いのだが、いつの間にか、いつものパターンでオーバープレゼンスになっている。
委員:前回、行政がしてはいけないことをはっきりさせるという意味で首長からヒアリングをすれば良いのではないかと発言した。まだ十分に整理できないのだが、行政補完型又は行政代替型のボランティア、あるいは行政が出捐した財団法人などは数多く存在している。その時でも、行政は何故そうするのかという理由を整理しているはずであり、それを分析すれば、プレゼンスの内容がわかってくるのではないか。大変な作業になるのかもしれないが、今までボランティア活動を支援してきた考え方や理念、根拠を整理してみると、何がオーバープレゼンスなのかわかるし、ボランタリーセクターが行政主導、又は行政の非常に微妙なコントロール下におかれるような、いわゆる「第3セクター」とならないようにできるのではないか。
委員:審議会の第2期答申でも、「制度の再構築」ということで、社会的ニーズのうち、行政が専門的に取り組むべき分野に限定していくという発想、それから補完性の原則を基本とした行政と民間の役割分担の見直しということが書いてある。アクティブシティズンシップを促進していくためには、取り組むべき分野を限定していく発想が大事だ。だから、基本方針は、そこへ戻ってしまうのではないか。
委員:震災以降、NPOの人たちの要望は一致していて、活動拠点の整備は自分たちの力では限界があるので、行政が整備して欲しいということ、助成金や法人格の申請をする時の書類づくりが大変だから、経理を中心としたエキスパートの支援をして欲しいということ、それとリーダーの問題など、決まって幾つかの要望事項がある。もちろん緊急の場合は別にして、それを全部行政が聞いていくとおかしなことになる。それに代わって、審議会の第2期答申では、行政改革の根っことして、彼ら自身の自立促進という方向にしていくため、ボランタリーセクターの形成という論理になっている。だから、基本はそれぞれの自立の促進なのだが、緊急避難的な問題が常に混在するから、それに対応する論理が必要である。
委員:拠点の問題にしても、従来から、公的な活動をするための拠点は行政が持っているが、何故それを行政が管理しないといけないのか。そういうところを開放していくだけでも随分具体的な動きになる。
委員:今、神戸市などが開放しているのはそういうことだ。各市町でも、そういう方針で具体的にやっているところもあるが、まだ十分にできていないところもある。
委員:場の話が出たのだが、公民館がまんべんなく設置されているが、その活用が大事である。神戸市では地域福祉センターという小学校区単位の拠点整備がなされているが、そこはあまり使われていないのに、NPOは場所がなくて困っている。人々の意欲と、本当に使えるもののミスマッチが社会的資源の大きな無駄になっている。そういう使い方について、誰が痛い目、辛い目をして民主的なものにするのかという議論がないまま施策が進んでしまっていて、無駄なものがどんどん出来ている。しかも、先日のヒアリングで郡部も同じであると感じた。第3期答申でも「公正」ということで、また同じことをやろうとしているが、もう少し個別であっても良いのではないか。そこに住んでいる人たちの自主的、自発的な活動を支援するのだから、必要なものを整備したら良い。必要でないものまで整備することはなく、拠点の問題と人々の意欲の問題をどうひっつけて表現するかが大事である。
委員:資料4の選択の基準のところは、これまで行政がサービスとしてやってきたことに非常に無駄があったので、公正さとか効率性などで行政の行うべき基準をつくろうというものだ。
委員:そこでは現実に対する反省がない。今までのことをどうするのかという反省がないままに進むのなら、結局同じことにならないか。
委員:反省があったから、今後、行政をどう展開していくのかという基準みたいなものを示したのだ。
委員:それでは、もう少し細かく施策のあたりで、例えば、施設をつくる時に住民から意見を求めて決めていくということが必要ではないか。そういう民主的な手法とか、民主的な動きを側面的に支援することも、もう少し踏み込んで書いていただきたい。そして、その発展型として、そういう辛い調整役を行政が買って出るんだというところが見えないと、また住民任せになって、結局ボスが仕切るという従来の悪いパターンになってしまう。
委員:今の発言は、行政のことではなく、ボランタリー活動そのものの「有効性」とか、「効率性」とか、「公正さ」とかが問われているということだ。すると、支援の仕方も、全体の流れは規制緩和だと思う。規制緩和の中で野放しにして、ボランティアの方もその需給の中で評価されて、駄目なら倒れていく状況になることが必要ではないか。例えば、拠点を1年間なり2年間契約するが、活動が実らなかったら更新されないような、そういうルールづくりも必要だろう。そういうことを踏まえた施策が必要ではないか。つまり、「公正さ」なども単なる順番待ちではなく、やはりそこに誰かの価値判断が入るのだが、その中で良いものは応援していこうという、今までの行政ではできなかったようなメリハリのついたサポートが必要だろう。
委員:二人は同じような意見を言っているようだが、基本的には違う意見だ。どちらかと言うと、NPOの方が行政がもっとオーバープレゼンスしろという論理である。
委員:そうではなく、今までの責任をとって欲しいと言っているだけだ。
委員:責任をとるということは、例えば、ボス化している人たちもコントロールしろということか。
委員:民主的な運営になれば、自然とコントロールされると思う。
委員:住民が民主的になれば、確かに可能であろうが、そのルールはだれがつくるのか。
委員:条例か、支援施策の中でつくっていくものである。
委員:そこが違う。基本的な考え方は違っている。市場メカニズムだとサービスを受ける方が判断するので、生き残れなくなることもあるというかなり厳しいものだ。
委員:前回も、ボランティアグループとか団体も自立が基本だろうが、そうではない場合も存在するという意見を言った。今の話でも、確かに民主的に運営できたら良いだろうが、地域によってはボスがいるがために上手く運営できるところもあるし、民主的にしたためにその施設や組織が駄目になったところもある。それでは、どうすれば良いかというと「個別性」である。それぞれの地域に、その地域独特の雰囲気があるはずで、それをどう掴んで上手く生かしていくかということが大事ではないか。例えば、ボスがいたとしても、そのボスが駄目であれば、自分たちでそれを排除して運営していけるかということが自立ではないか。
委員:新自由主義的な発想だと、ボスからも手を引けということになる。例えば、新しい施設を新しく出てきた団体に任せると、また新しいボスをつくるだけだ。基本的には自立をさせて、必要なものは残っていくという考え方である。つまり、一方では自由を求めながら、他方では行政に何かをしてくれというのは、実は自己矛盾だということをハッキリわかってもらわないといけない。
委員:行政はどんな関与の言い方をしたら良いのかということだが、現実には、我々の委員会自身では引き受けられないようなちょっと難しい問題だ。理念的に言うと、手を引けば良いのだが、現実には難しい。本当は、市町レベルで協働の委員会をつくって、個別性で解決していけば良いのだろうが、その辺のニュアンスを上手く意識した表現ができるかどうかだ。
委員:先程、「公正」が駄目だという意見があったが、実は、今までの行政は「公平」であって、「公正」はおそらく議論されていない。第3期答申は、非常に難しい課題にチャレンジしようしている。どういう状況が「公正」と感じるかは、やはり住民の意識によって随分違ってくる。しかし、私は市場メカニズムでやると、必ず力の強い者が勝つので、それが「公正」だとは思わない。「公正」という場合には、価値観が入ってくるので、言葉で言うのは簡単だが、それを担保するために具体的にはどうしたら良いのか、まだわからない。
委員:この「公正さ」の概念は、両極端にわかれていて学者の間でも結論が出ていない問題である。それを、一審議会の中で決着をつけようということは、非常に無理な話なので、これで話を終わりとしたい。
委員:環境の分野でもジャスティスということは、そこの環境によって異なるし、論者によって違っている。それはそうとして、どこかで「個別性」の大切さみたいなものを入れたい。そこへつなぐ道筋はまだ言えないが、「開かれていることの必要性」みたいな、どういう表現なのかよくわからないが一言ほしい。
委員:標題が「ボランタリー活動の促進」となっているが、ボランタリーセクターの形成とか、ボランタリー活動の促進ということが自己目的化するのは非常に危険だ。かつて高度成長期に中小企業政策で失敗したのは、中小企業政策自体が目的になってしまったからだ。今のNPO政策も同じ轍を踏みかねない雰囲気がある。全く自由放任でないというのは構わないが、いろんな政策手段を比較して、どういう支援の仕方が良いのか、基本方針をみればわかるような文章にしていかないといけない。例えば、NPOに事業委託をするとか、協働事業をするとか政策手段のオプションはいろいろあるのだが、そういうものを評価できるようにしておく必要があるのではないか。
委員:何をすべきかという政策手段は見えている。そうすると、そこから逆に、それを見ながら基本方針を決めていけば、指摘のあったような逆転現象にはならないだろう。5年、10年の期間で少しづつ整備していく中で、あるいはボランティア活動がしやすい具体的な条件づくりの中ででてくるものだろう。あまり細かいことばかりを文章にしても仕方がないので、基本的な考え方みたいなものを書くことになるだろう。
委員:行政が何をするかという議論になりがちだが、もともとボランタリーな活動というのは、人間が成熟化して最後に求める自己実現なのだから、基本的には金をあげるということは馴染まない。しかし、行政での議論なので、行政がいかに支援できるかということになるが、あまり行政が何かするというのは、そもそもボランティアというものと矛盾していくのではないか。
委員:自己実現の最も高いものは、それをどう社会に還元していくかということであって、自分自身の問題ではない。第3期答申の中でも、このボランタリーな活動は「共」の領域を担うもので、今まで行政が担えない分野を担うのだと書いている。そうだとすれば、最初から市場原理に放り出されて、行政も税金で活動手段をすべて整えているのに、NPOが何もなく素手で、市場原理の中ですべてやれと言われても厳しすぎる。それでは「共」の世界ではなく、「私」の世界である。だから、「共」の領域は何なのか、「共」の領域を担保するためにどういう支援をするのかということに行き着くと思う。
委員:市場原理との関係で言うと、それは自己矛盾になる。つまり、第3セクターをノンプロフィットと位置づけて、プロフィット(営利)とノンプロフィット(非営利)の中で捉えようとすると、ノンプロフィットの中でもマーケット理論があるということになる。しかし、そういう部分もあるが、ボランタリーセクターとか第3セクターは、市場メカニズムにはない、別な価値観の中でとらえられるマーケティングの問題がある。つまり、「共」の領域では、適者生存とは違う切り口でどう「ジャスティス」という問題をとらえていくかということである。我々が言おうとしている、人間とか、地球など第3セクターのジャスティスというのは、必ずしも第1、第2のセクターの中で言われているものと同じではないということだ。上手く説明できないが、そこで大事になってくるもう一つの視点が、NGO(非政府)なのか、GO(政府)なのかというものだ。それが落ちてしまって、ノンプロフィットかプロフィットかということで見てしまうと、市場メカニズムの論理になってしまう。これからつくろうとしている「公共」が、行政の占有物でななく、フレームとしては第3セクターとしての市民ボランタリーセクターであって、今、トライアルに「共」の部分を担おうとしている担い手は、極めて脆弱な論理しかまだないし、実践もまだ入り口である。だから、行政が取り組んできたボランティア支援をする場合の約束事が明確になってくれば、どこまでが必要なプレゼンスで、オーバーではないのかということがわかってくる。そういう、今まで行政がボランティを支援してきた時のスタンダードがハッキリされてくるといいなと思っている。そして、この基本方針の議論をする時に何を言えば良いのか、理念を言えばいいのか、ある種の方法論に基づくところまでを言えばよいのかまだ見えない。また、ボランタリーセクターというものがどういうものか、どこかで整理されて説明ができれば良いと感じている。
委員:ちなみに、例えば、兵庫県がいわゆる自発的なボランティア団体に対して支援していることは、表彰、財団を通じた3万円の助成、県市町社協ボランティアセンターのコーディネーターの一部人件費補助程度のものだ。もれるものもあるかもしれないが、だいたいこの程度である。
委員:表彰の要件みたいなものはどんなものか。
委員:市町や市町社協、社会福祉法人などいろんな団体からの推薦に基づいて、継続年数や活動回数など一定の基準を設けて表彰している。
委員:サービスの内容は、考慮するのか。
委員:サービスの内容ももちろん議論する。例えば、お年寄りのボランティアの推薦が多い場合、若い人のボランティア活動を表彰したらインセンティブになるのではないかとか。分野は全分野を対象にしているが、こんな分野までボランタリーな活動があるのなら、それではインセンティブをつけようかということも選考委員会でやっている。
委員:生活文化部だけでなく、他の部局にもボランタリーな活動に行政が大きな影響力を持つものがある。例えば、森林ボランティアでは、行政が旗を振って、主に里山でボランティア団体を育成してきた。他の分野でも、住民と県のどちらか主体がわからないくらい県がボランティアを支援しているものがある。行き過ぎだと言われるかもしれないが、現実の一つ一つの活動を見る限り、旗を振るのは行政だが、それはそれで意味を持っているのかなという印象を持っている。
委員:地域福祉財団を通じた3万円の助成についても、非常に幅広くやっているが、どういう効果があったのかは必ずしも検証されていない。また、直接的な支援ではないが、走る県民教室なども、見方によれば活動の援助といえる。こういうものであっても、いろんな形で取り決めがあるので、場合によっては、それが団体にとって重荷になることもある。
(4) その他
委員長:今日は、哲学議論となったのだが、この検討委員会の位置づけを確認すると、まず条例があって、その基本的なあり方について、県民生活審議会の意見を聴くこととしている。その県民生活審議会が、ボランタリーな分野の専門家に集まってもらって検討していただいているのだが、そろそろ意見をまとめていく必要があるので、今後の進め方の提案をしたい。今後は、検討委員会を各地で公開で実施しながら、団体ヒアリングを行っていくことになるが、同時にペーパーもまとめていくことが必要である。今までは、どちらかというと事務局で集約していたのだが、ボランタリーな活動の促進というテーマの性格もあり、素案の素案を委員の誰かにお書きいただき、それに基づいて議論を行いたい。もちろん、素材は事務局から提供させるので是非どなたかにお願いしたい。委員長の私としては、鳥越委員にお願いしたいがいかがか。
事務局:これまでの意見の論点整理を事務局の方でさせていただき、他県の例も参考にしながら、ある程度、素材となるようなものは事務局でまとめるので、是非お願いしたい。
委員:今の趣旨はわかった。何かがないと討議しにくいのは事実なので、限定されたものになるかと思うが粗い原稿を出していきたい。今の委員長のご意見を大切にしながら、事務局と話をしていくこととする。
委員長:事務局と相談の上でお願いしたい。その他、何かご意見がなければこれで委員会を終了する。
以上
seikatsusouzouka@go.phoenix.pref.hyogo.jp
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