第144号 知事対談 (平成29年10月12日対談)

<知事対談>グルメ・特産品を活かしてふるさとを元気に!

今回のテーマは「グルメ・特産品を活かしてふるさとを元気に!」。 朝来市の道の駅「但馬のまほろば」支配人兼駅長の福丸さんと、伊丹都市開発会社(伊丹のまちづくり会社)の参与の村上さんに、知事と語り合って頂きました。

自己紹介

福丸 東京都出身で、大学卒業後、千本鳥居で有名な京都の伏見稲荷大社で10年間神職に就き、その後は京都の「下鴨茶寮」で食材を勉強し、9年前に現在の道の駅「但馬のまほろば」に転職しました。3年前からは駅長を務めています。

知事 神主さんから駅長さんに・・珍しいご経歴ですね。駅長さんが自ら、神主をするわけですね。

村上 私は京都市伏見区の出身で、26年前に結婚して、酒どころから清酒発祥の地に嫁に来ました。引っ越してきた当初は、街づくりや歴史には全く縁も興味もありませんでした。9年前に街のイベントに参加したのをきっかけに街のお手伝いを始め、NPO法人いたみタウンセンターの理事長を経て、今は、まちづくり会社「伊丹都市開発株式会社」の参与として、イベントのお手伝いをしています。我が社は、伊丹市中心市街地活性化協議会の事務局として、「伊丹まちなかバル」、「イタミ朝マルシェ」、「いたみわっしょい」、「伊丹クリスマスマーケット」、各種講座やまちあるきなどの、様々なイベントを行っています。

知事 伊丹といえばお酒の街ですからね。また、お酒だけではなく、江戸時代から文化の街なんです。文化面にもタッチされているんですよね。

村上 一番最初に関わったイベントが「鳴く虫と郷町」という、虫の声を聞きながら様々なことをするイベントでした。伊丹には小西酒造さんが作られた「修武館」という日本三大私設道場があり、「そこで何かイベントをしませんか」と言われて、初めてイベントをしました。クラシック、ジャズ、狂言、能などをして、今年9月にはフラメンココンサートを。イベントに関わったことがきっかけで音大に通い、次は勉強をしようと思い、今年の3月にまちづくりの大学院にも行きました。イベントで自分の人生が変わってきましたね。

知事 とても好奇心が強くて、積極的な性格ですね。

但馬は食材の宝庫

知事 福丸さんは「神職」、「食材を仕入れるお仕事」、「道の駅の駅長」と、三段跳びのような変化ですが、なぜそのような選択をされたのか、お聞きしたいです。

福丸 今の3つには1つのキーワードがあります。伏見稲荷大社の稲荷大神様は元々、農耕・稲・お米の神様です。下鴨茶寮は、食を提供するお店です。道の駅は、農産物を中心とした食材をPRするところで、全て食がテーマなんです。但馬に来て「食材の宝庫だな」と驚き、私の天職だなと思い、但馬の食材を本気でPRして地域活性化・経済効果に繋げたいと始めました。 日本三大ねぎのひとつ、朝来特産「岩津ねぎ」の認知と商圏拡大からスタートして、今やっと少しずつ岩津ねぎが地域ブランドになってきたと思っています。

知事 岩津ねぎは本当にブランド力があって、兵庫県も推奨しています。

福丸 生の岩津ねぎは11月23日から3月21日の期間限定でしか食べられず、なかなか広まりませんでした。規格がとても厳しいので規格外品ばかり出てしまい、今までは岩津ねぎを作る農家さんが自己消費するか、廃棄をしていました。それを今は全部まほろばが買い取り、加工品を作っています。

知事 どんな加工品を作っているんですか。

福丸 ラー油、スープ、ドレッシング、ウインナー、ソーセージなどがあります。他にも、交流人口を増やすという目的で、集客イベントを定期的に行っています。今回8回目となる地域活性化イベント「ロードサイドステーションフェスタ」が、まほろば最大のイベントです。元々、但馬のお宝のPRを目的にはじまり、今では秋の恒例イベントになっています。今年も9月24日に開催し、但馬3市2町をはじめ兵庫・大阪からグルメが46店舗、はばタンをはじめ兵庫県内のゆるキャラが16キャラクター来ました。来場者は1日で約2万人でした。

知事 レストランのバイキングにも特色があるんですよね。

福丸 毎週水曜日・木曜日に、まほろばにある野菜・果物、但馬牛、豚、鶏を使って、おばんざいバイキングをしています。おばんざいは京都の家庭料理という言葉で、「地元のお客様の生まれ育っているところは、美味しい食材がたくさんあるよ」という意味を込めて、おばんざいバイキングを始めました。



知事 ちなみに売り上げはどのくらいになるんですか。

福丸 年間約9億2500万です。

知事 1つの道の駅で10億近い売り上げをあげているのは、そんなに聞きませんよね。

福丸 おそらく全国でもあまりないと思います。兵庫県のなかでもないと思います。

常にチャレンジを続けるまほろば

知事 「但馬のまほろば」は、どうして皆さまに来ていただけるようになったんでしょう。

福丸 まほろばは、前に北近畿豊岡自動車道があり、高速を出ずに来ていただけるので、他の道の駅より立地条件には恵まれていると思います。また、常に新しいことにチャレンジしています。
例えば、全国の道の駅で1番最初に「Pepper」を導入しました。朝来市の多次市長にお願いして、朝来市の非常勤職員として辞令をいただき、但馬朝来の観光PRもしています。

知事 観光大使でもあるんですね。

福丸 英語・中国語・韓国語・フランス語にも対応しています。さらに国内では珍しい、免税店になっています。

知事 するとインバウンド対策も、随分と力を入れられているんですね。

福丸 はい。対象が限られていますが、外国人旅行者の方が来られたら、まほろばで野菜果物を買えば、手土産として持って帰ることができます。(農水省の「おみやげ農畜産物検疫受検円滑化支援事業」に参加)
海外の方は1週間も2週間も滞在されるので、まほろばで買ったものを関空に送ってあげるんです。国によって、検疫しなくてよいもの、ダメなものが決まっています。ダメな物は早めに送ってあげたり、検疫の代行をしてあげます。それ以外に、シンガポールの方だけですが、但馬牛を持って帰ることができます。

知事 面白いですね、コロンブスの卵になるかもしれません。普通、検疫が大変だから、そもそも持って帰れないと思い込んじゃいますよね。 いかに福丸さんが創意工夫を次々重ねているか、実態をお伺いすることができて、大変嬉しいです。

常にチャレンジを続けるまほろば

知事 村上さんは、まち歩きイベントに参加したことがきっかけで、まちづくりにタッチするようになられた、ということですが、どこに惹かれたのでしょうか。

村上 今まで会ったことがない人たちと会えるところです。自分が面白いと思ったことが次に繋がったり、達成感を感じたり、普段得られない体験をしました。

知事 伊丹でバルをやっておられますが、これは何年も続いているんですか。

村上 今年で8年半、今度で17回です。元々函館のバルが発祥で2004年に出来て、その後に伊丹がやりました。

知事 道の駅「但馬のまほろば」からも出店していただいたら。

村上 いいですね!

福丸 声をかけていただければぜひ!!

知事 バルを始めるので苦心された点はありましたか。

村上 第一回の時は、兵庫県の震災復興の補助金をいただき、函館さんに全部ノウハウを教えてもらって始まりました。私は、初めてのコンサートが終わって「やりきった感はあるけどちょっと寂しいな」という気持ちになっていたときに、知り合いの方に「手伝って」と言われたんです。セールスをしたこともなかったのですが、お店に行って「無料で、普段の営業時間、写真、地図も載るし、当日にバルのメニューを出すだけで、こんなに参加できるんですよ」ということを口説いて回るのがすごく楽しくて・・・。


知事 お店は、どんどん口説かれたんですか。

村上 1週間で70件ぐらい回りました。「せっかく口説いたんだから実行委員会に入ったら」と言われて、市民で一人だけ実行委員に入らせていただきました。最初は54店舗でしたが、今は100店舗前後の規模です。

知事 ベルギービールも出すんですよね。

村上 長寿蔵さんで出されます。長寿蔵さんは千人以上入りますね。

知事 お客さんに、お店をくるくるっと回っていただくわけですね。

村上 700円5枚綴りのチケットを持って、100店舗のお店から選びます。初めてのお店に入るのはなかなか勇気がいることですけど、気になっていたお店や、高級なお店とか、女性ならオヤジさんが居るような立ち飲み屋さんでも、チケット一枚で入れます。

知事 異次元体験ができるんですね。

村上 そうですね。回っているうちに、知らない間にまち歩きが出来ます。

知事 伊丹は古い江戸時代から続いている酒倉の旧宅など、立派な文化財が残っています。お店の店主は、お客さんに「うちの自慢のこれは何々だ」と口上は立てるんですか。

村上 バルマップにはお店からのメッセージを載せています。

知事 どこのお店に行くかを決めておかないと、とても全部は食べられないでしょうね。

村上 そうやってうろうろ回るのも楽しいですよね。「オトラクな一日」というイベントも同日開催されていて、38組のミュージシャンがいろんなお店や舞台で演奏してくれます。

まちづくりのきっかけになった伊丹のバル

知事 バルは、伊丹のまち自身にどんな影響があるといえるんでしょうか。

村上 9年前には、そんなにイベントもなかったのですが、現在では毎週何かイベントがある街になりました。
初めはたまたま「まちなかバル」があって、実行委員会で会議を重ねるうちに飲食店の人々が自分たちもイベントをしようとなり、「屋台村」というイベントを三軒寺前広場で実施しました。それを支える市民サポーターの人が新しくイベントを始めたり、屋台村では昭和57年生まれの人たち(五七会)がイベントをして、五七会の下の世代の方たちが中心市街地外も盛り上げるロックフェス「ITAMI GREENJAM」を始めたら、五七会の人たちが飲食ブースを出して応援して・・・。


知事 まちなかバルが、伊丹のまちづくりの中核になっている。他の地域だと、お年寄りが元気ですよね。

村上 若い人たちが「何かやろう」という時に、「失敗してもいいからやってごらん」って背中を押してくれているところが、すごく良いと思います。

知事 バルはそういう広がりがあるから、参加しやすくなっているんですね。

村上 そうですね。しんどいお店は年に1回の参加でも良いですし。誰か一人という訳ではなく、1番バッターから9番バッターまでみんな居るような感じで。

知事 それぞれ特色のある人がいるんですね。じゃあ藤原市長はコンダクター(指揮者)ですか。

村上 藤原市長は市民力を大事にされるので、応援してくださっています。今度10回目となる修武館のコンサートにも第1回目から来ていただいています。「鳴く虫と郷町」では60のイベントが各地で行われていて、演劇やコンサートなどを昆虫館の人と文化財団の人が立ち上げられたんです。

知事 次、何か計画されてるものはありますか。

村上 私が面白いなと思っているのは、この「イマチワークス」です。兵庫県の補助をいただいています。イマチ(IMATI)は反対から見ると伊丹(ITAMI)になります。これは若い人たちが考えてくれました。DIY、好きを仕事にする方法、農業、ローカルなどをテーマに実施してきました。今までのまちづくり関係ではないテーマに絞って、いろんなところから講師の方を呼んでいます。
今までの「まちづくり」という形では参加されなかった若い人たちが、これには来てくださっています。ここからまた広がったら良いなと思っています。

知事 これも続いていくことが大事ですね。

まほろばの新しい風

知事 福丸さん、今度は三田に進出していただきますが、どうぞよろしくお願いします。

福丸 こちらこそ。三田市のカルチャータウン内に、兵庫県の食のアンテナショップを、2018年の春頃にオープンする予定です。三田に新しい風を吹かそうという意味を込めて、「三田まほろばブレッツァ」という名前です。(※ブレッツァ:イタリア語で「そよ風」)
今スーパーでは、イートインコーナーが主流です。今後は、「レストランで食べてもらって、気に入った食材、調味料等が有れば隣の売り場で買って帰って家でも楽しんでね」というスタイルが主流になると思うので、食べて買ってもらうというのをコンセプトにしています。
ブレッツァの特徴として、Kiss-FM KOBEと連携し、サテライトスタジオとしても活用します。道の駅でもない、スーパーでもない、レストランでもない、という新しい店舗展開を進めて、三田を中心に地域活性化・経済効果に繋げられたらなと思います。

知事 ありがとうございます。かなり三田にマッチしているコンセプトですね。まほろばさんが進出するので、苦戦しているカルチャータウンの分譲が少しずつ動き始めています。

村上 救世主ですね。

今後の抱負

知事 それでは最後に、未来に対する抱負を述べていただきます。最初は村上さんからお願いします。

村上 人生は一回きりなので、これからも興味の赴くまま、楽しいと思うことを無理なくやっていきたいです。それが結果的に、街の賑わいに繋がれば良いなと思っています。楽しませてもらって、またそういう方々の手助けもできれば嬉しいです。

知事 せっかく大学院で学ばれた知識を実地に活かしていただければと思います。どういうまちづくりを学ばれたんですか。

村上 学んだことは、「ソフトを通じてつながりが出来ていくか」ということで、伊丹での9年間について、やっぱり賑わいには「場」と「人」と「イベント」が要るよねということを論文に書かせてもらいました。その「人」も、決められたコミュニティではなく、アソシエーション(自分から見つけていく縁)が作用するのではないかと。

知事 だから「自分で選択をしてその一因になっていく」というプロセスが必要なんですね。
では福丸さんの抱負をお願いします。

福丸 道の駅「但馬のまほろば」としては、顧客満足度日本一の道の駅を目指していきたいなと思っています。全国道の駅初のミシュラン獲得を、私はずっと目指しています。元々ミシュランは、車で行く価値のあるところに対して星をつけていましたが、今はレストランとか観光地に特化してしまっている。 「車で行く道の駅が1,117あるのに、どこもミシュランを取ってないのはおかしいだろう、絶対取ろう」と思い、頑張っています。「まほろばブレッツァ」では、三田でまほろばの新しい風を吹かせて、兵庫県をそこから盛り上げていきたいです。

知事 三田は急成長したんですが、成熟化してきて、住んでいる人も高齢化した方々とまだ若い方々に両極化しています。だから新しい新興都市の顔と成熟した都市の顔の、両方に対応できるような新しい風を是非吹かせていただくと、ありがたいです。
伊丹では、空港まで阪急が乗り入れるプランが発表になっていましたね。今後は関空と伊丹と、神戸空港が同じ会社で運営されることになりますので、伊丹空港をどう活用していくかは大きな課題になります。
地元としても、どう使うかを考えていただきたいと思います。

村上 そうですね、夢は広がりますね。

知事 今日はお二人とも、お忙しい中お出で頂いて、大変ユニークな、それぞれの活動をお聞かせいただきました。本当にありがとうございました。これからも益々のご活躍をお祈りしております。