特定非営利活動促進法の概要

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1 法の趣旨

 特定非営利活動促進法(以下「法」といいます。)は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的として、平成10年3月に制定され、同年12月1日に施行されました。
 公益的な活動を行う団体が簡便に法人格を取得することのできる制度として、民法第34条(公益法人の設立規定)の特別法と位置付けられています。
 法人格を取得することにより、契約などの法律行為の主体となり、法人名義での資産の保有等の財産管理ができるようになります。また、それと同時に、法人としての社会的責任や法律上の義務を負うことになります。

2 法人設立の要件

 法人となるには、以下の要件を満たす必要があります。これらの要件は、すべて法に定められており、設立時の基本財産や過去の活動実績の有無などは、法人の設立要件ではありません。

〔活動目的に関すること〕
(1) 特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること(法第2条第2項)
 特定非営利活動とは、次に掲げる12項目に該当する活動であって、かつ、不特定かつ多数の利益(*) の増進に寄与することを目的とする活動です。
  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  5. 環境の保全を図る活動
  6. 災害救援活動
  7. 地域安全活動
  8. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  9. 国際協力の活動
  10. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  11. 子どもの健全育成を図る活動
  12. 1〜11の活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動

* 不特定かつ多数の利益とは
 社会全体の利益を意味するものであり、特定の個人や団体の利益(私益)を目的とするものでないことはもとより、構成員相互の利益(共益)を目的とする活動ではないことをいいます。いわゆる「公益」という法律用語と同義のものです。

(2) 営利を目的としないこと(法第2条第2項第1号)
 活動により得た収益を構成員(理事や社員)に分配することはできません。次年度の活動のために繰り越すことになります。また、財産を構成員に還元することはできず、法人を解散する際の残余財産の帰属先は、国・地方公共団体又は定款で定める特定非営利活動法人・公益法人などに限定されています。
 なお、法人は特定非営利活動に係る事業(本来事業)に支障がない限り、収益事業を行うことができ、その収益は特定非営利活動に充てることとされています。

(3) 宗教活動を主たる目的としないこと(法第2条第2項第2号イ)

 「宗教活動」とは、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、又は信者を教化育成することをいいます。

(4) 政治上の主義の推進・支持・反対を主たる目的としないこと(法第2条第2項第2号ロ)
 「政治上の主義」とは、政治によって実現しようとする基本的、恒常的、一般的な原理や原則のことをいいます。

(5) 特定の公職の候補者、公職者又は政党の推薦・支持・反対を目的としないこと (法第2条第2項第2号ロ)
 「特定の公職」とは、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び首長の職をいいます。

〔組織等に関すること〕
(1) 社員が10人以上であること(法第12条第1項第4号)

 「社員」とは、法人の構成員であり、法人の最高意思決定機関である総会において議決権を持ち、法人の意思を決定します。一般的には正会員に当たるものです。社員は個人又は法人、人格のない社団(いわゆる任意団体)であり、国籍、住所地等の制限はありません。

(2) 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと(法第2条第2項第1号イ)
 社員の加入・脱退の自由を保障するための要件であり、法人の設立趣旨や活動目的に賛同する個人・法人等の入会を妨げるような条件を設定しないことをいいます。
 ただし、活動目的、事業計画等に照らして、合理的な理由がある場合は「不当な条件」となりませんが、定款や組織、事業計画等から個別に判断することになります。

(3) 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること (法第2条第2項第1号ロ)
 報酬とは、役員としての活動に対する報酬であり、法人の職員として給与を得ている場合は、この報酬には当たりません。

(4) 暴力団又は暴力団若しくはその構成員の統制下にある団体でないこと (法第12条第1項第3号)

3 設立の手続


 法人を設立するためには、法に定められた書類(*1)を添付した申請書を、所轄庁(*2)に提出し、設立の認証を受けることが必要です。提出された書類の一部は、受理した日から2カ月間、公衆に縦覧(*4)されることになります。(法第10条第1項、第2項)
 所轄庁は、申請書の受理後4カ月以内(*4)に認証又は不認証の決定を行います。設立の認証後、登記をすることによって、法人として成立することになります。(法第12条第2項)

*1 設立認証申請に必要な書類(法第10条第1項)
  1. 設立認証申請書(様式第1号)
  2. 定款
  3. 役員名簿
  4. 役員の就任承諾書
  5. 役員の住所又は居所を証する書面
  6. 役員の宣誓書の謄本
  7. 役員のうち報酬を受ける者の氏名を記載した書面
  8. 社員のうち10人以上の者の氏名及び住所又は居所を記載した書面
  9. 確認書(宗教活動・政治活動・選挙活動を目的としないこと、暴力団でないこと)
  10. 設立趣旨書
  11. 設立者名簿
  12. 設立についての意思決定を証する議事録の謄本
  13. 設立当初の財産目録
  14. 設立当初の事業年度を記載した書面
  15. 事業計画書(設立の初年(度)及び翌年(度))
  16. 収支予算書(設立の初年(度)及び翌年(度))

*2 所轄庁とは(法第9条)
 法人の所轄庁は、その団体の事務所の所在地によって決まります。
 兵庫県内のみに事務所(*ア)を設置する団体は、活動場所が兵庫県外や海外であっても、兵庫県知事(*イ)に設立認証申請を行うことになります。2つ以上の都道府県に事務所を設置する団体については、内閣総理大臣が所轄庁となります。

*ア 事務所とは
 法人の事業活動の中心である一定の場所をいい、一般的には、責任者が所在し継続的に業務が行われる場所を指します。
 本法では、主たる事務所において、事業報告書等を備え置き、閲覧に供することを義務づけていますので、そうした対応のできる体制を整備する必要があります。

*イ 兵庫県の申請・相談窓口
兵庫県県民生活部企画調整局課長(男女共同参画・ボランタリー担当)付
NPO法人担当
〒650-8567 神戸市中央区下山手通5−10−1 県庁第1号館4階
TEL: 078−362−9102 NPO法人担当
FAX: 078−362−4261
   メールアドレスks_danjyokyoudou@pref.hyogo.jp

*3 所轄庁における縦覧
 所轄庁は、法人から提出された設立の認証等の申請書類を縦覧します。
【法第29条第2項】
 それらの書類は、下記の場所で縦覧されています。
県民生活部企画調整局課長(男女共同参画・ボランタリー担当)
 神戸市中央区下山手通5-10-1 兵庫県庁第1号館4階
 Tel O78−362−9102(直通)

県立神戸生活創造センター
 神戸市中央区東川崎町1-1-3神戸クリスタルタワー内
 Tel078−360−8530(直通)

阪神南県民局県民運動推進課
 尼崎市東難波町5-21-8尼崎総合庁舎内
 Tel O6−6481−7641(代)

阪神北県民局県民運動推進課
 宝塚市旭町2-41宝塚総合庁舎内
 Tel0797−83−3101(代)

東播磨県民局県民運動推進課
 加古川市加古川町寺家町天神木97ー1加古川総合庁舎内
 Tel0794−21−1102(代)

北播磨県民局県民運動推進課
 加東郡社町社字西柿1075-2社総合庁舎内
 Tel0795−42−5111(代)

中播磨県民局県民運動推進課
 姫路市北条1−98姫路総合庁舎内
 Tel 0792−81−3001(代)

西播磨県民局県民運動推進課
 赤穂郡上郡町光都3-5-1
 Tel0791−58−2100(代)

但馬県民局県民運動推進課
 豊岡市幸町7−11豊岡総合庁舎内
 Tel 0796−23−1001(代)

丹波の森公苑
 氷上郡柏原町柏原5600
 Tel 0795−72−2127

淡路県民局県民運動推進課
 洲本市塩屋2-4-5洲本総合庁舎内
 Tel 0799−22−3541(代)


4 法人の管理・運営

(1)活動の原則
 法人は、特定の個人・法人その他の団体の利益を目的として事業を行ってはなりません。また、法人を特定の政党のために利用してはなりません。

(2)役員(法第15条)
 法人には、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければなりません。

 理事は、それぞれが法人の執行機関として、法人の業務を代表します。ただし、定款によって代表権を制限することができます。

 監事は、理事の業務執行の状況、法人の財産の状況について監査します。監事は理事又は法人の職員を兼ねることはできません。
 役員になれる人については、親族の数の制限など法で一定の制限(*1、*2)が設けられています。

*1 役員の欠格事由(法第20条)
 法人の公益性に配慮して、次の欠格事由のいずれかに該当する者は、法人の役員になれません。
  • 成年被後見人・被保佐人
  • 破産者で復権を得ないもの
  • 禁錮以上の刑に処せられ、2年を経過しない者
  • 法又は暴対法等(*ア) により、罰金の刑に処せられ、2年を経過しない者
  • 法第43条の規定により設立認証を取り消された法人の解散時の役員で、取消の日から2年を経過しない者

*ア暴対法等とは
 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、暴力行為等処罰に関する法律

*2 役員の親族等の排除(法第21条)
 特定の役員とその家族が法人を私物化することを避けるため、それぞれの役員について、配偶者又は3親等以内の親族が1人を超えて含まれてはなりません。また、それぞれの役員とその配偶者及び3親等以内の親族が、役員総数の3分の1を超えて含まれてもなりません。
 したがって、役員の配偶者と3親等以内の親族は、
@役員総数が6人以上の場合は、1人までは、役員になることができます。
A役員総数が5人以下の場合は、1人も役員になることはできません。

(3)総会の開催(民法第60条、第61条)
 法人の事務は、定款で理事等の役員に委任しているもの以外は総会の決議に基づいて行います。
 通常総会は少なくとも毎年1回開催しなければなりません。
 理事が必要であると認めるときや総社員の5分の1以上から請求があったとき(この定数は定款で増減可能)は、臨時総会を開催することができます。

(4)収益事業(法第5条)
 法人は、特定非営利活動に係る事業(本来事業)に支障がない限り、その収益を本来事業に充てるため、収益事業を行うことができます。
 この場合、収益事業に関する会計は、本来事業に係る会計から区分し、特別会計として経理することとされています。

(5)会計の原則(法第27条)
 法人の会計は、次の原則に従って行わなければなりません。
  1. 収入及び支出は予算に基づいて行うこと
  2. 会計簿は正規の簿記の原則(*1)に従って正しく記帳すること
  3. 財産目録・貸借対照表・収支計算書は、会計簿に基づき、収支・財産状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすること
  4. 採用する会計処理の基準及び手続は毎年継続して適用し、みだりに変更しないこと

*1 正規の簿記の原則とは
 企業会計の基本原則を定めた企業会計原則に定められた言葉であり、正確な会計帳簿を作成するための原則です。具体的には、一般に、次の3つの内容が含まれていると解されます。
  1. 取引記録が、客観的にして証明可能な証拠によって作成されること
  2. 記録計算が明瞭正確に行われ、かつ順序区分など体系的に整然と行われること
  3. 取引記録の結果を総合することによって、簿記の目的に従い、企業の財政状況及び経営成績あるいは財産管理の状態などを明らかにする財務諸表が作成できること

(6)役員の変更(法第23条)
 法人は、新しく役員が就任した場合や役員の氏名・住所に変更があった場合には、所轄庁に役員変更等届を提出しなければなりません。

(7)定款の変更(法第25条)
 定款を変更するためには、所轄庁の認証が必要です。ただし、軽微な事項については所轄庁の認証は不要です。なお、この場合には、定款変更後に届け出ることが必要です。
  1.  次の事項に係る定款の変更を行う場合は、兵庫県知事の認証を受けなければなりません。
     なお、兵庫県外へ事務所を移転する場合(又は兵庫県外にも事務所を新設する場合)は、変更後の事務所の所在地の都道府県知事(又は内閣総理大臣)が所轄庁になりますが、申請書類の提出は、兵庫県知事を経由しなければなりません。
    • 目的
    • 名称
    • その行う特定非営利活動の種類及び当該特定非営利活動に係る事業の種類
    • 主たる事務所及びその他の事務所の所在地(所轄庁の変更を伴うもの)
    • 社員の資格に得喪に関する事項
    • 役員に関する事項
    • 会議に関する事項
    • 会計に関する事項
    • 収益事業を行う場合には、その種類その他その収益事業に関する事項
    • 解散に関する事項
    • 定款変更に関する事項

  2.  次の事項に係る定款の変更を行った場合は、定款の軽微な変更に当たりますので所轄庁に届出を行わなければなりません。
    • 主たる事務所及びその他の事務所の所在地(所轄庁の変更を伴わないもの)
    • 資産に関する事項
    • 公告に関する事項

(8) 解散(法第31条、第32条)
 法人は、総会での議決・所轄庁の認証等の一定の手続きを経て、解散することができます。
  1.  法人は、次の事由により解散します。
    1. 社員総会の決議
    2. 定款で定めた解散事由の発生
    3. 目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能
    4. 社員の欠亡
    5. 合併
    6. 破産
    7. 設立の認証の取消し
  2.  法人が、1の「目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能」に基づいて解散をしようとする場合は、所轄庁に対して申請を行い、認定を受ける必要があります。
  3.  法人が、1の1、2、4、6の事由により解散を行った場合は、所轄庁に届出を行う必要があります。
  4.  法人が解散する場合、残余財産は、定款で定めた者(*1)に帰属しますが、定款に定めがない場合で、国又は地方公共団体に譲渡しようとする場合は、所轄庁に認証申請を行い認証を受ける必要があります。また、残余財産について、定款に定めがなく、認証申請も行わない場合は、国庫に帰属することとなります。

*1 定款で定めることができる残余財産の帰属先
残余財産の帰属すべき者は、次に掲げる者のうちから選定されなければならない。
  1. 他の特定非営利活動法人
  2. 国又は地方公共団体
  3. 公益法人(社団法人・財団法人)
  4. 学校法人
  5. 社会福祉法人
  6. 更生保護法人

(9) 清算(民法第74〜76条)
 法人の清算中に清算人が就職した場合は、登記簿謄本を添えて、所轄庁に届出を行う必要があります。
 清算人は、清算結了後に、登記簿謄本を添えて、所轄庁に届出を行う必要があります。

(10) 合併(法第33〜39条)
 法人は、総会での議決・所轄庁の認証等の一定の手続きを経て、別の特定非営利活動法人と合併を行うことができます。この場合の所轄庁は、合併後の法人の事務所の所在する都道府県知事(2以上の都道府県に事務所を設置する場合は、内閣総理大臣)になります。
 兵庫県知事の認証を受けるときは、合併により設立する又は合併により存続する法人が、兵庫県内のみに事務所を設置する場合に限られます。

(11) 所轄庁による監督等
 所轄庁は、法令違反等一定の場合に、法人に対して、報告を求めたり、検査を実施し、また、場合によっては、改善措置を求めたり、設立認証を取消すこともできます。
 また、法に違反した場合には、罰則が適用されることがあります。

  1.  報告徴収・検査(法第41条第1項)
     法人が法令や法令に基づく行政庁の処分又は定款に違反する疑いがあると認める相当な理由があるときは、所轄庁は、法人の業務又は財産の状況に関し、報告をさせ、又はその職員に検査をさせることができます。
  2.  改善命令(法第42条)
     所轄庁は、次の事項が認められる場合は、法人に対して、その改善のために必要な措置をとるよう命ずることができます。
    1. 法第12条第1項第2号〜第4号に規定する法人の要件を欠くとき
    2. その他法令、法令に基づいてする行政庁の処分又は定款に違反するとき
    3. その運営が著しく適正を欠くとき
  3.  設立認証の取消し(法第43条第1項、第2項)
     所轄庁は、次の場合には、聴聞手続を経て、法人の設立の認証を取り消すことができます。
    1. 法人が改善命令に違反し、他の方法により監督の目的を達することができないとき
    2. 3年以上にわたって事業報告書等の提出を行わないとき
  4.  罰則規定(法第47〜50条)
     改善命令に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられるほか、登記することを怠ったときや、各種届出義務、事業報告書等の作成・備置き・提出義務等に違反したときには、20万円以下の過料に処せられることがあります。

5 法人格取得後の義務等

 法人格取得後は、この法やその他の法令、及び定款の定めにしたがって活動しなければなりません。

(1) 事業報告書等の情報公開と所轄庁への提出(法第29条第2項、法第44条第3項)
 法人は、毎年(年度)終了後3か月以内に、毎年(毎事業年度)の事業報告書等(*1)を作成 して、所轄庁に提出するとともに、主たる事務所に備え置いて、社員その他の利害関係人の請 求があった場合は、正当な理由がある場合を除いて、閲覧させなければなりません。
 また、所轄庁は、法人から提出を受けた書類(過去3年分)を閲覧に供します。なお、内閣総理大臣が所轄庁となる法人についても、事務所の所在地の知事に書類が送付され、閲覧対象となります。

*1 閲覧に供される書類
  1. 事業報告書
  2. 財産目録
  3. 貸借対照表
  4. 収支計算書
  5. 役員名簿
  6. 報酬を受けたことのある役員の氏名
  7. 社員のうち10人以上の者の氏名及び住所又は居所を記載した書面
  8. 定款の写し
  9. 認証書の写し
  10. 登記に関する書類の写し
(定款、認証・登記に関する書類の写しについては、変更があったものに限る。)

(2) 納税
 法人に対しては、いろいろな税金が課せられます。ここでは、一部例を挙げています。 国税である法人税については、公益法人と同様に、法人税法に規定された収益事業(*1)からの所得に対しては、課税されることとなります。それ以外からの所得については非課税です。
 地方税も、収益事業から生じた所得に対しては、課税されます。また、法人住民税(均等割)は、所得の有無に関わらず原則として課税されます。

*1 法人税法上の収益事業(法人税法第2条第13号、法人税法施行令第5条第1項)
 特定非営利活動促進法に基づく本来事業、収益事業の区別にかかわらず、法人税法に規定された33業種に該当する事業は、収益事業とみなされます。
 また、特定非営利動に係る事業(本来事業)であっても、法人税法上は、収益事業とみなされることがあります。
販売業、製造業その他下記の事業で、継続して事業場を設けて営まれるもの。 物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、一定の技芸教授業等、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業

〔国 税〕
法人税(収益事業から生じた所得に対して課税)
年間所得800万円以下 22.0%
年間所得800万円超   30.0%
〔地方税〕
法人の都道府県民税・市町村民(標準税率)
 均等割(地方公共団体内に事務所を有する法人について課税)
都道府県 2万円
市町村 5万円
* 兵庫県では、収益事業を行わない法人に対する法人県民税(均等割)を減免します。
 減免を希望する法人は、納期限(4月30日)までに減免申請書等を県税事務所へ提出してください。
 法人税割(収益事業から生じた所得に対して課された法人税を基礎に課税)
都道府県 法人税額の5%
市町村 法人税額の12.3%
 法人の事業税(標準税率、収益事業から生じた所得に対しての課税)
年間所得 400万円以下           5.0%
年間所得 400万円超〜800万円以下 7.3%
年間所得 800万円超            9.6%
*都道府県、市町村によって、税率等が異なる場合があります。
〔寄附金への控除〕
寄附金の種類 控 除 額
公益法人等が寄附する場合 普通法人が寄附する場合(※) 個人が寄附する場合
所得税 地方税
@国又は地方公共団体への寄附 全 額 全 額 所得の25%−1万円の範囲内 所得の25%−10万円の範囲内 (※)
A指定寄附金(日本赤十字 社等への寄附金)
B特定公益増進法人に対する寄附金 収益事業の所得 の20%の範囲内(※) 一般寄附金枠とは別にそれと同額の枠の範囲内
C@〜B以外の一般寄附金 一般寄附金枠の範囲内
D本来事業に対する繰り入れ(みなし寄附金)
※については、それぞれ例外があります。
* 一般寄附金枠とは
 @ 資本又は出資を持つ法人の場合
(期末の資本金額+期末の資本積立金額)×0.125%+所得×1.25%
 A 資本又は出資を持たない法人の場合
所得×2.5%

(3) 労働基準法及び社会保険について
 NPO(ここでは特定非営利活動法人に限らず、広く非営利組織一般として使います。)は、継続的に活動を行いますので、有給職員を1人でも雇用すると、労働基準法第8条に定める 「適用事業」となり、労働者を使用するようになったとき、使用者は、所定の様式「適用事業報告」を遅滞なく所轄労働基準監督署へ提出しなければなりません。なお、法人格を有するか否かは関係ありません。

* 主な労働基準法の規定
  1. 労働者を解雇するときは、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第20条)
  2. 賃金は直接、全額を支払わなければなりません。(労働基準法第24条)
  3. 労働時間の制限(労働基準法第32条)、休憩時間の設定(労働基準法第34条)、年次有給休暇等。(労働基準法第39条)
  4. 年少者、女性についての労働制限。
  5. 就業規則

* 就業規則の作成
 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届出なければならないと定められています。(労働基準法第89条)
 就業規則に定めるべき事項についても、法定されており、その内容を変更する場合にも行政官庁に届け出なければなりません。
 NPO団体も、常時10人以上の職員を雇っている場合には、就業規則を作成しなければなりませんが、職員が10人未満であれば、作成は義務づけられてはいません。

* 健康保険、厚生年金保険
 健康保険は、企業等で働く従業員とその家族の健康を守り、私傷病の際の負担を軽減するための社会保険です。
 厚生年金保険は、労働者が老齢になって働けなくなったりしたときなどに年金によって老後の生活保障を図ろうとするものです。
 いずれの保険についても、法律(健康保険法第13条、厚生年金法第6条)に列挙された事業を行う事業所で、法人では1人以上、個人では常時5人以上の従業員を使用しているものは、強制適用事業所として法律により当然に保険関係が成立することになっていますが、これにあたらない事業所については加入は任意とされています。
 NPO団体の場合は、個々の活動内容により列挙事業に該当するか否かを検討しなければなりません。例えば、営利を目的としない場合でも、反復継続的にものの販売を行う場合には強制適用事業所とされますし、障害者授産施設等社会福祉法に定める社会福祉事業も強制適用事業所となります。列挙事業に該当しない場合は、加入については任意ということになります。
 なお、任意加入の場合で加入しないときは、職員は、国民健康保険、国民年金に加入するということになります。

* 労災保険、雇用保険
 労災保険は、労働者が業務上の理由によりあるいは通勤途上で災害を受け、負傷したり病気になった場合に保険給付が行われるものです。
 雇用保険は、労働者の失業時の生活安定のために給付がなされているものです。
 労災保険も雇用保険も、労働者を使用する事業であれば適用事業とされますので、NPO団体も職員を雇う限り適用されることになります。したがって、加入手続をとっておらず団体が保険料を支払っていなくても、労働者は保険給付を受けられ、団体は遡って保険料を徴収されることになります。




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