兵庫県立西脇高等学校兵庫県西脇市

機械だけでは織れない播州織

 播州織は、すべての工程が西脇・多可を中心とする、播州地域で分業化されている。糸を撚(よ)る(撚糸)、糸を染める(染色)、縦糸を整える(整経)、糸に糊をつける(サイジング)、布を織る(織布)。完成までには約10もの工程があり、素材は工程ごとに専門の職人のもとへとトラックで移動する。そして、問題なく全工程を終え、出来上がった優秀な生地には、A評価(A反)が点けられる。一つでも工程の中で不具合があると、与えられない。
工場同士が離れ、決してやり易いとはいえない環境で、世界レベルの素材が織り上がる理由は、どこにあるのだろうか。私たちは疑問を抱いた。
私たちは撚糸工場を訪れ、50年近く撚糸職人として働く長井さんにお話を伺った。
長井さんが、この仕事にこだわり、長くこの仕事を続けてこられた理由。その理由は分業制ならではとも言える、職人同士の強いコミュニティにあった。話してくださる長井さんの顔つきが変わる。
「A反で仕上がって、やっとうちの仕事もAやねん。うちが悪くなかったとしても、A反であがらなければ、それはみんなの責任。どこもが頑張って、ちゃんとできてこそA。そういう仕事の仕方を大事にしてる。」
そのためにも、長井さんは普段から、前の工程とその後すべての工程の職人さんたちとの、コミュニケーションを大切にしているそうだ。“いいもの”を生み出すためには、指摘し合える関係を築くことが不可欠だと教えてくださった。
このことは、私たち生活情報科の活動でも同じことが言える。ファッションショーや小さな作品ひとつをとっても、様々なアイデアと議論がなければ、喜んでもらえるものは生まれない。高校3年間で得た大きな学びのひとつである。また、そのような大人の社会でも通用する気づきを与えてもらえるのが、生活情報科の特典である。
最高品質の播州織。そこに隠されていたのは、職人さんたちが培ってきた技術はもちろん、それだけではない職人同士の信用と信頼の循環だったのだ。

「職人さんによって、織りあがりが変わってくる。」
産元商社の方の言葉が私たちの心にひっかかった。布を織るのは機械の仕事であり、織り手によって仕上がりが変わるという事実を、直ぐに理解できなかったからだ。
機織(はたおり)職人の森本さんに、その疑問を単刀直入にぶつけてみた。
「難しい質問やなぁ…どんな高い世界一の素晴らしい機械、何億っていう機械をいれても、人がそれを使えんことには全く意味が無いやろ。どんないい機械があってもな、結局は人なんや。何をしても結局は人。コンピューターを扱うのも人。全てどんな仕事にしても世の中は人。織物の場合は、特にそういう感性みたいなものが必要やから、人っていうのは非常に大切。」
森本さんのやわらかい口調の中に、熱く訴えかける職人魂と製品へのこだわりを感じた。
さらに森本さんは、森本さんの工場で素晴らしい播州織が織りあがる理由を、聞かせてくださった。
「人に物を頼まれたときに、その人が何を求めているのか、この人はこういうことを思ってるんやろなっていうのを話の中で感じ取って、それを製品につなげていくと、相手も喜んでくれるし、より良いものが出来るねんな。」「『はいどうぞ、これ出来ましたよ。』って言った時に、相手がニコッとしてくれる。それを求めてるのかな、僕らは。それだけやな。」
ここですべてが繋がった。長井さんをはじめとする播州織職人の方たちが、この仕事を続けてきた理由。播州織が機械だけではできない理由。世界に誇る播州織。分業の中でこだわりを持ったプロ一人ひとりの納得が積み重なって1つの播州織が完成する。一切の妥協も許さない。
播州織とは職人同士のコニュニティが織り成す、洗練された職人技術の賜物なのだ。

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