すごいすと取材記

バッグデザイナー由利佳一郎 さん(51) 兵庫県

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豊岡鞄を表舞台に

平成17年、豊岡に戻ったことをきっかけに、実家の工場で鞄の製造を一から学ぶことにした由利さん。

「若くからやっている職人は30代前半でも10年15年の経験がある。そこに40を過ぎた社長の長男坊が、一から勉強すると言って突然工場に入った。派手だし、ヒゲも剃らないし、周りの職人たちからはなんやこいつと思われてた」と振り返る。それでも、鞄のつくりを修得するために、一年間工場で働いた。

ちょうどその頃、豊岡では鞄産業にひとつの変化が現れた。バブル崩壊、円高による海外企業の台頭などから、平成3年頃をピークに出荷額は縮小をしはじめていたのだ。この危機的な状況の中で地場産業をなんとか盛り立てるには、OEM生産とは別に自分たちのブランドを作り、「豊岡鞄」として独自の販売ルートを開拓する必要があるという動きが生まれてきたのだ。

 

もっと消費者に近づき、これまで表に出ることのなかった豊岡鞄の魅力を伝えたい。宵田商店街がまちづくりの一環としてカバンストリートを発足させたものこの頃だった。

宵田商店街カバンストリート入口

カバンストリート。来年には鞄職人学校に鞄ショップを併設した拠点施設TOYOOKA KABAN Artisan Squareがオープンする。

そうした動きに呼応するかのように、由利さんは家族の協力を得て、自身のブランドを立ち上げることを決める。

立ち上げ時からのパートナーである鞄職人の葉杖(はづえ)さんは、由利さんとの出会いをこう語る。

「豊岡は言ってしまえば、地味な産地だった。みんなが豊岡の鞄産業を有名にしたいと考えていたところへ、新しい物の見方を持った人が帰ってきた。彼は、豊岡を表舞台に出したいと言う。そんな彼に心惹かれ、一緒にやっていきたいと思いました」

鞄職人葉杖さん

工房でバッグ用の牛革を裁断する葉杖さん

豊岡に帰るまでは3Dグラフィックデザイナーの第一線にいた由利さん。「豊岡の鞄産業がOEM生産で支えられてきた以上、『豊岡鞄』と銘打って世に出すためには、既存のデザインの模倣であってはならない。新しい独自のデザインを編み出す必要がある」と考え、鞄のデザインに3Dの概念を取り入れた。

コンピュータ上に人体の動きを立体的に再現してきた知識と経験を生かし、コンピュータグラフィックを駆使して、新たな鞄のイメージをコンピュータ上で立体的に造形していく。同時に、コンピュータグラフィックを用いた設計は、デザインされた立体的な形状をより正確に再現できる設計図の作成も可能にした。

こうしてそれまでになかった独創的なデザインの鞄が、葉枝さんら鞄職人の確かな技術によって形となり、「ニューダレスバッグ」が豊岡発の鞄として世に出ることになった。

ニューダレスバッグと由利さん

ニューダレスバッグを手にする由利さん

こうして完成したニューダレスバッグ。平成21年には、世界的に最も権威のあるデザイン賞の一つ「i F デザイン賞」を、日本の鞄業界としては初めて受賞する。

車やカメラ、工業製品など、有名企業がこぞって応募するデザイン賞を、豊岡という地方都市の一企業が受賞したことは、大きなニュースとして迎えられた。

「突然帰ってきた人間が何をやってるんだと言われたこともある。でも受賞によって、豊岡の技術が世界にも通用するものだということを証明できた。審査委員には、こんな技術はヨーロッパにはないとまで言わしめた」

平成24年には、年2回イタリア・ミラノで開催される欧州最大級の国際皮革製品見本市「MIPEL(ミペル)」では、最高賞を受賞。

こうして由利さんはその斬新なアイデアをもって、職人たちの技術に裏付けされた豊岡鞄が、世界の表舞台で勝負ができる製品であることを最高の舞台で証明した。

ニューダレスバッグと由利さん

ミペルの授賞式にて。同年に二度の入賞を果たした。

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