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その他活動団体への取材 など

取材日:平成28年11月10日

特定非営利活動法人 利他の会

団体について

 姫路市内でボランティアグループとして始まった利他の会は、国内外で活発な活動を続けています。海外ではインドのクシナガラに小学校を4校建設し、その後も図書室の建設や備品や文房具の寄贈等を続けています。 国内では東日本大震災の被災地の学校に楽器などの援助を続け、その一方、姫路を舞台に毎年音楽祭や講演会を企画し、1,000人規模の会場を満員にしています。
 この旺盛なエネルギーは、いったいどこから生まれるのか。 姫路市内の閑静な住宅街にある利他の会の事務所を訪れ、岸本理事長にインタビューをしました。

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打ち合せをする岸本理事長(右)と島村副理事長(左)

Q:利他の会の活動の理念と、将来のビジョンについて教えて下さい。

 一言でいうと、子どもたちの明るい未来です。今の子どもたちに幸せになってほしいと心から願っていますし、そのために心の豊かさを育んでいきたいんです。当会のイベントには、そういう「心を育む」部分を必ず入れています。
 例えばインドの子どもたちは、モノは豊かではないけれども、感謝する心を持っています。それに対して日本の子どもたちは、有り余るモノに囲まれて、それが当たり前になっています。感謝する心を育てていかないといけません。 ですがそのためには、大人たちが見本になる生き方をしていかないといけませんね。

Q:活動を始めたきっかけは?

 1984年に私(岸本)が子ども会の役員を務めていたことがきっかけです。その当時のメンバーが集まって、任期が切れた後も、みんなで集まって子どものためのボランティアをやろう、ということになりました。
その時にすでに、「アジア・アフリカの子どもたちのための活動」という内容も盛り込まれていました。今でも不思議なのですが、その時に話し合ったことは、振り返ってみるとほとんど実現しています。

Q:活動を続けていく中で、転機になったのはどういうことでしょう?

 レーナ・マリアさんの姫路公演を実現させたことですね。彼女はスウェーデンのゴスペル・シンガーで、とてもきれいな声の持ち主でした。 両手がなく片足が義足というハンデを負いながら、パラリンピックにも出場しました。 当時の利他の会の規模ではとても招聘できるとは思えませんでしたが、実際は公演は大成功に終わり、剰余金まで出たんです。
 もっとも、そのお金は地域の子どもたちの為にすべて寄附して、グループを解散するつもりでした。ところが、たまたまインドでお釈迦様の聖地を巡った時に、インドの子どもの現実を知りました。 裸足で駈け回り、学校がないため教育も受けられません。何とかしたい、と思って、そのお金を元手にして学校を建設しました。それが、2008年2月に開校したリタ・サルダールパテル小学校です。 活動を継続するために、同年10月にNPO法人化し、その後も、タタガット小学校、タタガットパブリック小学校、そしてサンラグヌ小学校と、4校を建設し、それぞれの学校に地域では初の「図書室のある学校」が誕生しました。

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タタガットスクールの先生と生徒

Q:なぜそれだけ多彩な活動が、長年にわたって継続できるのですか?

 学生時代にカトリック系の学校に通っていましたし、母の影響もあるかもしれませんが、他人のために何かをすることは、自分にとってすごく自然で当たり前のことなんです。「利他」という言葉通り、そういう愛の気持ちを込めています。
 それから毎回のイベントごとに、やってよかった、と心から思っているからでしょう。インドでも心から喜んでくれる人たちの顔を見ることが、原動力になっています。利他の会の活動には、いつも感動があります。そして支援してくださった方々への感謝の思い。 だから続けていけるんです。

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リタスクールに図書室を寄贈した際のサンクスレター

Q:資金や人集めに苦労している団体も多いですが、秘訣はありますか?

 私たちは、多くの子どもたちの幸せのために、ご寄附を集めています。「利他の会に下さい」ではなくて、目の前に流れてくるものを受け取って、次に流しているだけです。目に見えない大きな存在の手足となって活動している感覚ですね。 私たちと支援者は、ウィン・ウィンの関係です。だって彼らと一緒に、「子供たちを幸せにする」というすばらしい機会がシェア出来るのですから・・・。
 ボランティアも多くの人にお願いしていますが、みんな、「やってよかった。また呼んで下さい」って言ってくれます。イベントの運営などをする時には、どうしてもマニュアルを作りたがる人がいますよね。 だけど、ボランティアって、そういうものじゃないでしょう。私たちが、指示をして動いてもらった事は一度もありません。その前に自分で仕事を見つけ、必要な場所に率先して動かれます。困っている人をフォローするのは、難しいとは思いますが、それが本来の姿だと思います。

Q:さて、認定NPO法人を取得しようとしたきっかけについて教えて下さい

 たまたま知人から、認定制度について教えてもらったのがきっかけです。当会は多くの方々から寄附を集め、国内外の団体を支援しています。もし認定を取れれば、そういった方々へのご恩返しになると思いました。寄附金控除だけでなく、認定を取ることによる社会的信用度がすごく魅力でした。
 実際に申請してから認定をいただくまでは、苦労の連続でした。書類の作成や保管はきちんとしているつもりでしたが、想像以上にチェックが厳しかったです。ただ幸いなことに、当会の役員にそういう専門知識を持った方がいらっしゃったお蔭で、助かりました。

Q:苦労して認定を取得して、良かったことはありましたか?

 関係者や知人に報告すると、「認定法人!?すごいですね!」と言ってくれる方が結構いたんです。あ、分かってくれる人は、分かってくれるんだなと、こちらも嬉しかったです。公演やイベントを企画する時も、「認定法人」だということが、大きな信用になりました。
 寄附をお願いする時もそうです。当会の場合は企業が多いのですが、以前よりも明らかに頼みやすくなりました。向こうの対応が違いますし、こちらも説明がしやすいです。認定法人になったことで、プライドを持ってお話に行けますね。

Q:最後にボランティアやNPO活動を考えている人に、メッセージをお願いします

 ボランティアは、やっている人が楽しまないと続きません。義務になってはダメです。楽しみながら、自分が世の中の役に立っていると実感できることが大事で、形ではありません。これから活動を考えている人は、まず身近な所から始めてみてはどうでしょう? 自分1人だけでもいいから、まず動くことで、周囲に輪ができます。グループ化を考えるのは、その次の段階ですね。あまり考えすぎると不安や心配が生まれて、行動できなくなってしまいます。考えるよりも行動です!その手始めとして、自分の思いを口に出して語りましょう。 日本では謙譲の美徳という考えが根強いですが、ネット時代なので、いいことはどんどん発信していきましょう!広く発信して参加を募っているうちに、何かをやりたい人が集まってきます。
 活動を続けるためには適度な「遊び心」が必要です。それには、「余裕」という意味があります。すべて計画的に、型にはめて考えてしまうと、想定外の事態が起こった時に、一気に回らなくなってしまいますから。ともかく、いまやっていることを楽しむことが大切です。 それが「遊び心」であり、心の余裕につながっていきます。

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利他の会では、古着の寄附も受付けている

この取材・記事についてのお問い合わせ先
兵庫県企画県民部県民生活課参画協働・ボランタリー活動支援班
TEL: 078(362)9102
FAX: 078(362)3908
Email:kenminseikatsu@pref.hyogo.lg.jp
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