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ネットワーク第141号 知事対談

    
    知事対談 “農”から広げるふるさとづくり

 今回のテーマは「“農”から広げるふるさとづくり」。神戸市西区の株式会社小池農園こめハウス代表取締役で兵庫県青年農業士会会長の小池潤さんと、淡路市で才田農園を営んでおられ、ひょうごアグリプリンセスの会会長でもある黒田美福さんと、知事に語り合っていただきました。


小池農園こめハウス
 
小 池   私は、大学を卒業する時に、一般企業に内定が決まったと父親に伝えたところ、父親から突然「おまえは家に帰ってくる宿命だ」と言われ、自分もいつかはふるさとに帰ろうとは思っていましたので、戻って農業を継ぎました。
知 事  それが何年前ですか。
小 池  それが17年前。4月で18年目に入ります。
知 事  18年もされているなら、もう中堅農業者ですね。
小 池  そうですね。でも私は神戸市内では珍しく土地利用型農家ですが、まだ17回しかお米をつくっていませんので、まだまだ初心者です。
知 事  随分、謙虚ですね。神戸米とその他に小麦や大豆もつくられているのですか。
小 池  はい。主食、食糧を生産するのが百姓だと父親がずっと言っておりまして、米と麦と大豆を中心に、小豆やいろいろな豆類をつくっています。
小池 潤さん  井戸知事


才田農園
 
知 事   黒田さんにお尋ねしますが、学校を卒業してからすぐに農業に従事したわけではないですよね。
黒 田  違います。主婦だったのですが、やはり子どもに新鮮なものを食べさせたい、そういう贅沢を与えたいと思い、自分たちでつくったものというのはなかなか食べられないものですが、自宅に耕作放棄地があったので、そこで野菜づくりを始めました。
 種をまき育てていくうちに、水をやれば大きくなるし、水をやらなかったら枯れてしまうという、野菜の単純な素直さというものに惹かれまして、自分の貸していた土地を返してもらうようになり、また逆に耕作放棄地を借り受けてつくるようになりました。
知 事  今はどのくらいつくられているのですか。
黒 田  年間で作付面積は約2ヘクタール強です。
知 事  何人でつくられているのですか。
黒 田  私と父と、パートの二人でつくっています。
知 事  野菜ですよね。
黒 田  野菜と米です。
知 事  野菜はどれくらいつくられているのですか。
黒 田  約1.4ヘクタールが野菜です。
知 事  淡路だから玉ねぎですか。
黒 田  玉ねぎは少しです。主に秋、冬、春ぐらいまではレタス、夏はピーマンです。あとはブロッコリーもつくっています。玉ねぎは重いので、私もパートさんも女性だから、面積的には比較的少ないです。
知 事  じゃあ主にはレタスとピーマン。よく頑張られていますね。その2ヘクタールを4人でつくれてしまうのですね。
黒 田  はい。一人では無理ですけれども。
知 事  華奢に見えますが。
黒 田  荷物を持つコツなどがあるんです。
黒田 美福さん


農産物に対するそれぞれの想い
  
知 事  小池さんの農園の農業規模はどれくらいですか。 
小 池  現在は年間で40ヘクタール。水稲12ヘクタール、小麦12ヘクタール、大豆5ヘクタール、飼料米6ヘクタール、野菜1ヘクタール等をつくっています。 
知 事  耕種農家の典型ですね。 
小 池  その中で、生産から販売まで一貫して、スタッフ皆で、食べるに一番近いところまでやっていこうということで、平成22年に神戸米という図柄で、商標を取りました。
 神戸に住んでいると神戸の地元のものが食べられますよという想いです。
 
知 事  その持っておられるのが神戸米ですか。 
小 池  神戸米です。同じ日に2種類商標登録させていただきました。一つは普段使い、毎日食べていただくお米ということで、六甲山と海があって、その間で神戸米が生産されているのを表しています。もう一つは消費者に自分が住んでいる地域には自分が食べるものを生産する地域がありますよと地方へ発信していただく、ギフト用のものとして登録させていただきました。お歳暮やお中元等で、地方へ神戸の農業を発信していきたいと思っています。 
知 事  小池さんのところは、何人でつくられているのですか。 
小 池  私を含めて5人でつくっています。将来は、一人ひとりが独立して、ピラミッド型経営ではなく、クラスター型の皆が親方というような、昔ながらの農業経営、家族経営的な農業の形態で神戸米生産が行えるように頑張っています。 
小池農園のスタッフ  商標登録した神戸米
知 事  神戸米を商標登録してブランド米化しようとされているのでしょうが、多くの消費者と生産者とを結びつけるためにどんな工夫をされていますか。売り込みに歩いているのですか。 
小 池  弊社はホームページはつくっておりません。 
知 事  珍しいですね。 
小 池  はい。1対1、相対といいますか、消費者とお話をすることによって、1回食べてみたいなと思っていただく。また、いろんなイベントの時も、実際にふれあいながら、言葉で言いますと食育を大切にしています。たとえばコンビニエンスストアやファミリーレストランのように24時間365日食べられるということが当たり前になりすぎていますので、それをどうしていこうかというのが課題です。食べられる状態で見るのではなくて、もっと前の普段の営農活動、生産の現場を見ていただくこと、実際の現場に来ていただくことをこれからの課題にしていて、消費者に体験してもらって、地元ではこんなものがあるんだな、今はこれが旬だなということを感じてもらいたい。そのようなふれあいを通したお客さんづくりをしていきたいと思っています。 
被り物をしてイベント等でPR
 
知 事  では黒田さん。野菜づくりで何かこだわっておられることはありますか。 
黒 田  漢方資材を土に入れたり、上から散布したりして、減農薬の健康的な野菜づくりをしています。
知 事  そうすると才田農園の売りは漢方入り野菜でしょうか。 
黒 田  はい、そうです。


農業を通じたつながり・発信
○ひょうごアグリプリンセスの会

 
知 事  黒田さんはアグリプリンセスの会をつくられましたが、あの会をつくられた意図はどういうところにあったのでしょうか。
黒 田  私がピーマンの栽培について発表をした時に出会った方から、県内には他にも若い女性農業者がいるんだよということを聞きまして、私自身、自分は珍しい存在だと思っていたので、女性農業者でぜひ1回集まってお話したいと思い、会うセッテングをさせていただいたのがきっかけです。
知 事  なるほどね。
黒 田  みなさんすごく元気です。
総会
研修会
知 事  持ってきていただいたのは作業着ですか。
黒 田  こちらの「ファーマーズアワジ」と書いてある作業着は、淡路市の農業青年クラブのメンバーでつくったものです。
知 事  ファーマーズアワジのメンバーは何人ですか。
黒 田  27人程が登録しています。
知 事  アグリプリンセスは何人ですか。  ファーマーズアワジのメンバー
でつくった作業着
黒 田  アグリプリンセスは10人です。


○Kobe Foo Style
 
知 事  小池さんの作業着は特色があるのですか。
小 池  もっと農家を利用して欲しいと思い、昨年「Kobe Foo Style」という組織を立ち上げました。
知 事  Kobe Foo Styleですか。
小 池  もっと農家を利用して欲しいと思い、昨年「Kobe Foo Style」という組織を立ち上げました。
 都市近郊に農業があるという環境の中で私が農業を始めたものですから、神戸から農業の大切さというのを発信したいなと常々思っています。
 その1つが神戸米、その次に「Kobe Foo Style」で、もっと農家、私たちの日常を知ってほしい。例えば週末、ちょっと普段食べている農産物の生育状況とかを見たいという時に、近くで農業をしている僕たちがそれを担っていくことができればと思います。兵庫県、それから全国にそういうことを発信していく。食べるということの大切さを伝えることの一つのはじまりにならないかなと思っています。
Kobe Foo Style のTシャツ
知 事  なるほどね。
小 池  それを神戸から発信するという意味もあります。
知 事  それでKobe Foo
小 池  そのKobe Foo StyleのTシャツです。
知 事  県でも、小学校3年生に環境学習に取り組んでもらっています。小学校3年生だと、種をまいたら芽が出てきて、育って、それが実になって、自分たちの命を支えてくれているという命の大切さに感動してくれます。だから皆さんにもお手伝いいただいていますが、小学校3年生に環境学習という形で、現場に入ってもらっています。
 黒田さんは、若い研修生はまだ入れていないのですか。
黒 田  昔は研修生を入れていましたが、今は入れていないです。
知 事  そうですか。我々も農業後継者をきちんと育てるために、研修生のような人を募集して、農家の人に預かっていただくという事業を始めたいなと考えているところです。その際は黒田さんのところにも行きますからね。
黒 田  ぜひ、よろしくお願いします。


これからの抱負
知 事  では、あらためてこれからの抱負を伺います。
黒 田  地元の淡路市仁井地区は中山間地域で、高齢化により耕作放棄地が増え、地域の景観が失われてくるという危機感がすごくあります、ですから、今までお世話になっている地域の方々に、これからは少しでも恩返しをしていきたいと思っています。
知 事  リタイアされる方々の農地をどんどん預かっていくということですか。
黒 田  はい。預かっていけるような大きな器になれたらなと思っています。
知 事  きっとなれますよ。頑張って下さい。
 小池さんのこれからの抱負をお聞かせください。
小 池  まずは神戸市内の農業を守っていく。それから、私も青年農業士会の会長をしていますが、兵庫県農業青年クラブ連絡協議会、ひょうごアグリプリンセスの会、兵庫県農協青壮年部協議会の4団体で「たべるをはじめる」という会を共同運営しています。たべることをもう一回考え直す、はじめてみませんかと。週末や月に1回でも自分の地域で採れたものを食べて欲しい。農家をもっと利用して、私どもも近づいていきながら交流を深めていくことで、その地域の旬、それから兵庫県でこれだけ豊かな農産物があるというのを見てもらいたくて平成25年から開始しました。その活動の一つとして、大学に講師という形で、管理栄養士学科の学生に、私どもが普段どういう農業をしているのかという授業を年間3コマさせていただいています。
 管理栄養士は施設で必ずこれから必要な役職と聞いているのですが、そのまだまだ若い20歳ぐらいの男女の学生たちにお話しをさせていただくことで、農業をもっと身近に感じていただき、将来食材を決めるときに、自分が仕事をしている地域にはこういう食材や特産物があるとか、これがこの季節の旬だなということを思い出してもらって、毎日は難しいと思いますが、イベントや月に1回はとか週に1回はという形で利用していただくことで、私たちがつくる農産物も売れることにつながればと思っています。
甲子園大学で講義する小池さんと黒田さん
小 池  交流を通じて宣伝し、消費してもらいたい。そうすることで、安定した農業経営をしていけるのではないかなと考えています。
知 事  地産地消とよく言うけど、地産食育ですね。
小 池  そうですね。食育ですね。
黒 田  はい。食育はすごく大事です。
知 事  今日はお二人から農業の第一線で活躍されているお話を伺いましたが、私は、兵庫は阪神間という大消費地を抱えているわけですから、その大消費地の消費者をめがけた農業を展開することによって、今後の兵庫農業は確立することができるはずだとずっと言っています。そしてその一つはやはり、大規模な米生産です。これは小池さんが目指されていますよね。
小 池  はい。
知 事  それからもう一つは、施設園芸を含めた野菜です。野菜・果樹。野菜・果樹が今まで取り組まれていなかったんですね。それはなぜかというと兼業農家が多すぎたんです。そういう意味でこれからの農業の担い手は専門家。プロフェッショナルになって、大都市近郊の地の利をぜひ活かして、米にしても、野菜にしても、果樹にしても、ブランド化をして、ここでしかないというものを売り込んで、消費者に理解していただくということが大切なのではないかと考えています。TPPに負けない兵庫農業づくりをしていきたいと思っています。お二人はその中核ですから、これからもどうぞよろしくお願いいたします。


農でふるさとを盛り上げる
 
知 事  何を持ってきていただいたのですか。
黒 田  これは「淡路アグリアソート」のマルシェのチラシです。
知 事  カルメニマルシェ。
黒 田  はい。神戸ハーバーランドのカルメニで毎月第1日曜日にマルシェをやっています。

知 事  このチラシは「山賊と海賊に出会う街、神戸」ですか。
小 池  農家を山賊、漁師を海賊に見立てまして、昨年は神戸の都市近郊農家・山賊を巡るツアーを企画しました。
知 事  なかなかおもしろそうですね。
小 池  今度2月14日は須磨浦漁港で、ワカメの収穫等を体験する漁師・海賊に会いに行くツアーを開催します。このようなツアーをこれからやっていこうと思っています。