知事 |
今年は阪神・淡路大震災から15年を経過した節目の年です。それに際し、私達が非常に懸念をしている3つの事柄があります。 1番目は、被災された高齢者の方々もこの間、15歳、歳を取られたということです。高齢化に伴ういろいろな課題が出てくる。それをどう受け止めて対応していくか。 2番目は、地域の元気です。なかなか地域の元気が戻ってこない。これは地域の人口減少と少子高齢化が共に影響しているのだと思います。一方で、長田の鉄人28号のような地域のシンボルが多くの観光客を引き付け、新しい街の空気をつくり出すことに成功している例もあります。 それから3番目は、震災時や復旧復興時における体験や経験、教訓の風化と、本当にいざという時に行動できるのかという課題です。 東南海地震は20年以内に発生する確率が70%以上あるといわれています。70%あるということは絶対起きるということです。ちゃんと準備はできているのか。満15年を迎えるにあたり、「伝える」「備える」をテーマとし、取り組みを進めています。そのような意味で、地域の防災力を実際に担っていただいている3グループの皆さんの活躍ぶりをお伺いさせていただければと思っています。 それではまず最初に、加古川グリーンシティ防災会の活動からお願いします。 |
大西 知事 大西 知事 大西 知事 大西 知事 |
生活防災力の重要性 加古川グリーンシティは、584世帯が住むマンション群で、約2,000人が暮らしています。1986年に完成し、コミュニティで楽しく防災活動を行ってきました。普段の生活のすべてを防災に絡めながらやっていくことが我々の活動のコンセプトです。これが一番大事な生活防災力だと思っています。 また、自分が提供可能な能力を登録する「町内チャンピオンマップ」や「命のライセンス」、「帰宅支援サポーター」などの制度、それらをまとめた「非常持ち出し本DIB」というマニュアルも作成したほか、「防災井戸」もつくりました。兵庫県初と言われています。阪神・淡路大震災の時には飲料水だけではなく、生活用水が非常に不足したことから、自力で水不足を解消するため、自分たちの資金で、どこの支援も受けずにつくったものです。普段はコミュニティの場になっていますが災害時には、緊急設備に切り替えることで、10本の蛇口から1分間に200リットル出す能力を持っています。 素晴らしいですね。メンバーはどれ位いるのですか。 主要メンバーは約30人、住人約2,000人が全員防災会員です。 自主防災組織でこれだけ体系的にやっているところはあまりないのではないですか。 これだけやっても、実際の災害時にはどれだけ行動できるか。多分駄目だろうとは思っています。 防災訓練も繰り返して、やっとできるかどうかですよね。頭で理解していても駄目です。身体が動かない。しかし、「命のライセンス」など、ネーミングもみんなが防災に親しめる感じがあります。防災井戸も、よく作りあげましたね。 そうですね、震災の教訓から学んだことのひとつであり、日々の活動を住人の皆さんにご理解いただいていたからだと思います。 それと求心力がある大西さんがいることも強いのでしょう。 それでは引き続き、旧居留地連絡協議会の西金さん、山本さん、お願いします。 |
大西 賞典さん |
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西金 知事 山本 知事 山本 知事 |
企業版町内会として 旧居留地には、現在1,000の事業所があり、そこで約25,000人の方が働いておられます。旧居留地連絡協議会は、ビルオーナーを中心に100余の会社で構成されています。会員相互の親睦を第一に活動しており、全国的にも珍しい企業による地域コミュニティとなっています。 阪神・淡路大震災後、まず取り組んだのが企業の『「防災マニュアル」作成のためのマニュアル』作りです。 次に、旧居留地の地域防災計画の策定にとりかかりました。企業ごとの取り組みでは足りない部分をお互いに支援すること、さらに旧居留地は来訪者が多いので、非常時にはその方々の命を助け、スムーズな帰宅を支援する計画を策定しています。平成13年に初版、平成20年に改訂版を策定・発行しました。 旧居留地内では、大災害が昼間に起きると、帰宅困難者が約2,000人位発生すると想定されます。この方々に、行政のバックアップ態勢が整うまでの間、最長72時間、3日間に限定して、各ビル内の会議室や廊下を、雨露凌げる待機場所として提供することになっています。このような合意を約100社の会員企業間でしています。 活動が進化してきています。よく100社以上の皆さんがまとまりましたね。帰宅困難者対策を自前でやられているところは、東京都も含めてあまり聞いたことがない。25,000人の社員はどうするのですか。 自社の社員の命と財産は自社で守ることを前提にしています。 各社の帰宅困難者は各社ごとに対応する。その上で、来訪者で帰宅困難者の2,000人程度を、3日間は分担して引き受けるという共通理解があり、いざというときにはそれをベースに行動することになっているのですね。 そうです。行政の防災計画ではないので、きっちり決めてしまうと長続きしない。防災委員長一人の責任ではなく、理想はみんなが防災委員長になったつもりになれるような環境づくりをしていこ うということです。 実験的防災訓練みたいなものをやってみると良いかもしれませんね。では神戸学院大学の皆さん、よろしくお願いします。 |
山本 俊貞さん | 西金 秀記さん |
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高木 知事 赤穂 知事 高木 知事 高木 知事 高木 稲田 赤穂 知事 高木 |
防災に興味を持ってもらいたい! 僕たち神戸学院大学学際教育機構防災・社会貢献ユニットでは「防災に興味を持ってもらいたい!!きっかけをつくりたい!!」を、防災教育の第1目標としています。防災をごく当たり前に考えられるように、きっかけづくりをしたい。そのために、僕たちは出前授業を行っています。地域の幼稚園や小中高で、様々な防災教育の教材を使い、楽しく防災を学んでもらっています。 子どもたちだったら身体で示さないといけませんね。赤穂さんと稲田さん、避難所生活体験をしてみていかがでしたか。 今までは語り部さんの話を聞くだけだったのですが、実際に体験すると、トイレは簡易トイレで夜も眠れず、冷たいご飯を毎日食べるという状況で、すごく辛かったです。 ユニットで学んでいる人たちは何人位ですか。 2回生から1学年50人位です。 そうすると150人。随分なパワーですね。それで何グループ位に分かれて出前授業に出かけるのですか。 出前授業に行く時は、基本的には有志を募るので、興味がある人が行くこととしています。 年にどれ位行くのですか。 僕は年に5〜6回です。 私は、救命などの実習で講習会にも行くので、もう少し多いです。 私も同じです。 最初に防災への興味を引くためのきっかけづくりを目標にしているという話がありましたが、関心を持ってもらえますか。 授業を行えば、関心を持ってもらえます。これを子供たちが家で話し、それが広がって、地域の防災力に繋がっていけばと考えています。 |
高木 洋輔さん | 稲田 靖子さん | 赤穂 智千夏さん |
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知事 大西 知事 西金 知事 高木 知事 |
防災コミュニティのネットワーク化を では、大西さんから、今後の抱負等を一言ずつお願いします。 今の活動を継続して、さらに楽しさを加えながら、本当に災害時に対応できる適応能力のスキルアップを図っていきたいと思っています。今までは地域コミュニティが大事だと言われていたのですが、実際それだけでは災害には対応できないと分かってきたので、地域コミュニティの地域防災力のスキルアップをもっと図らなければいけないと思っています。 ぜひ頑張ってください。それでは西金さん。 住宅地では、皆さん顔見知りでお互い助け合うことは非常に重要で大切であるとわかっているのですが、業務地ではなかなか近隣の人とのお付き合いがない。業務地こそ、余計に隣近所のお付き合いが大切だと思います。今後も親睦に力を入れ、それが結局は防災にも役立つのではないかと考えています。 次に神戸学院大学の皆さん。 僕たちはスローガンのとおり「防災に興味を持ってもらいたい」ので、興味を引き出せるような防災教育の教材を作ったり、しっかりと次の災害に対応できるような人材を地域にも育成していき たいと思います。 活発に活動されている地域、グループの皆さんがおられるのに、意外とその情報が繋がっていない。 私は旧居留地連絡協議会が、こんな活動を、こんなに密接にやられているとは思っていなかったのです。そういう意味では、もう少しネットワーク化するような仕掛けができないかと思います。そうすれば、お互いに不足する点を協力して補い合うことができる。せっかく量の確保ができているから、少し連携しながら質の確保に繋がればと思います。 ただし一番の基本は日頃の防災意識と、それに基づく日頃からの行動です。それで防災訓練が重要だということになるのではないかと思います。 皆さん方が、地域の防災力を高める活動を今後ますます積極的に展開されることを、心から願っています。 今日はありがとうございました。頑張ってください。 |
井戸知事 |