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ネットワーク第125号 特集

  特集 地域で防災に取り組もう


  未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災から十五年が経過し、この間、地域の防災力向上のための様々な取り組みが展開されてきました。
 今回は、コミュニティ・企業・教育機関の中から、地域の防災・減災活動に積極的に取り組んでいる「加古川グリーンシティ防災会」、「旧居留地連絡協議会 防災・防犯委員会」、「神戸学院大学 防災・社会貢献ユニット」の皆さんが、「地域で防災に取り組もう」をテーマに知事と語り合いました。

 
   加古川グリーンシティ防災会
旧居留地連絡協議会 防災・防犯委員会

神戸学院大学 防災・社会貢献ユニット


兵庫県知事
大西 賞典さん
西金 秀記さん
山本 俊貞さん
高木 洋輔さん
稲田 靖子さん
赤穂 智千夏さん
井戸  敏三


知事




 今年は阪神・淡路大震災から15年を経過した節目の年です。それに際し、私達が非常に懸念をしている3つの事柄があります。
 1番目は、被災された高齢者の方々もこの間、15歳、歳を取られたということです。高齢化に伴ういろいろな課題が出てくる。それをどう受け止めて対応していくか。
 2番目は、地域の元気です。なかなか地域の元気が戻ってこない。これは地域の人口減少と少子高齢化が共に影響しているのだと思います。一方で、長田の鉄人28号のような地域のシンボルが多くの観光客を引き付け、新しい街の空気をつくり出すことに成功している例もあります。
 それから3番目は、震災時や復旧復興時における体験や経験、教訓の風化と、本当にいざという時に行動できるのかという課題です。
 東南海地震は20年以内に発生する確率が70%以上あるといわれています。70%あるということは絶対起きるということです。ちゃんと準備はできているのか。満15年を迎えるにあたり、「伝える」「備える」をテーマとし、取り組みを進めています。そのような意味で、地域の防災力を実際に担っていただいている3グループの皆さんの活躍ぶりをお伺いさせていただければと思っています。
 それではまず最初に、加古川グリーンシティ防災会の活動からお願いします。



大西












知事


大西

知事

大西


知事




大西


知事

生活防災力の重要性

 加古川グリーンシティは、584世帯が住むマンション群で、約2,000人が暮らしています。1986年に完成し、コミュニティで楽しく防災活動を行ってきました。普段の生活のすべてを防災に絡めながらやっていくことが我々の活動のコンセプトです。これが一番大事な生活防災力だと思っています。
 また、自分が提供可能な能力を登録する「町内チャンピオンマップ」や「命のライセンス」、「帰宅支援サポーター」などの制度、それらをまとめた「非常持ち出し本DIB」というマニュアルも作成したほか、「防災井戸」もつくりました。兵庫県初と言われています。阪神・淡路大震災の時には飲料水だけではなく、生活用水が非常に不足したことから、自力で水不足を解消するため、自分たちの資金で、どこの支援も受けずにつくったものです。普段はコミュニティの場になっていますが災害時には、緊急設備に切り替えることで、10本の蛇口から1分間に200リットル出す能力を持っています。

 素晴らしいですね。メンバーはどれ位いるのですか。

 主要メンバーは約30人、住人約2,000人が全員防災会員です。

 自主防災組織でこれだけ体系的にやっているところはあまりないのではないですか。

 これだけやっても、実際の災害時にはどれだけ行動できるか。多分駄目だろうとは思っています。

 防災訓練も繰り返して、やっとできるかどうかですよね。頭で理解していても駄目です。身体が動かない。しかし、「命のライセンス」など、ネーミングもみんなが防災に親しめる感じがあります。防災井戸も、よく作りあげましたね。

 そうですね、震災の教訓から学んだことのひとつであり、日々の活動を住人の皆さんにご理解いただいていたからだと思います。

 それと求心力がある大西さんがいることも強いのでしょう。
 それでは引き続き、旧居留地連絡協議会の西金さん、山本さん、お願いします。



大西 賞典さん

 
加古川グリーンシティの取り組み

 平成10年に自主防災組織として設立。「楽しく防災をやろう」をスローガンにマンションの防災対策に徹底的に取り組んでいる。

 ソフト面での事業
 「非常持ち出し本DIB」(何のために防災活動を行うのかを導き出す本の制作刊行)
・「町内チャンピオンマップ」(自分の持っている特技の登録)
・「あんしんカード・REC」(緊急連絡先等の登録)
・「ひと声かけて」登録制度(災害時にひと声掛けて下さい登録制度)
・「あいさつ運動」
・「防災パトロール隊」(子どもたちと合同の夜回り)
・「グリーンだより」(コミュニティ紙)
   ハード面での事業
 「グリーンネット」(マンションの運営情報及び緊急情報システム)
・「ニューメディアシステム」の設置
・防災会ホームページの制作運営
・「緊急時安全管理システム」(防犯カメラの設置)
・「防災井戸」の設置
防災井戸 被災時に発生する「飲料水不足」「トイレ用水不足」の対策として、敷地内に地下30mの井戸を掘る。災害時には最低限の「生活用水」を供給、普段はコミュニティの場を提供している。




西金













知事



山本

知事




山本



知事


企業版町内会として

 旧居留地には、現在1,000の事業所があり、そこで約25,000人の方が働いておられます。旧居留地連絡協議会は、ビルオーナーを中心に100余の会社で構成されています。会員相互の親睦を第一に活動しており、全国的にも珍しい企業による地域コミュニティとなっています。
 阪神・淡路大震災後、まず取り組んだのが企業の『「防災マニュアル」作成のためのマニュアル』作りです。
 次に、旧居留地の地域防災計画の策定にとりかかりました。企業ごとの取り組みでは足りない部分をお互いに支援すること、さらに旧居留地は来訪者が多いので、非常時にはその方々の命を助け、スムーズな帰宅を支援する計画を策定しています。平成13年に初版、平成20年に改訂版を策定・発行しました。
 旧居留地内では、大災害が昼間に起きると、帰宅困難者が約2,000人位発生すると想定されます。この方々に、行政のバックアップ態勢が整うまでの間、最長72時間、3日間に限定して、各ビル内の会議室や廊下を、雨露凌げる待機場所として提供することになっています。このような合意を約100社の会員企業間でしています。

 活動が進化してきています。よく100社以上の皆さんがまとまりましたね。帰宅困難者対策を自前でやられているところは、東京都も含めてあまり聞いたことがない。25,000人の社員はどうするのですか。

 自社の社員の命と財産は自社で守ることを前提にしています。

 各社の帰宅困難者は各社ごとに対応する。その上で、来訪者で帰宅困難者の2,000人程度を、3日間は分担して引き受けるという共通理解があり、いざというときにはそれをベースに行動することになっているのですね。

 そうです。行政の防災計画ではないので、きっちり決めてしまうと長続きしない。防災委員長一人の責任ではなく、理想はみんなが防災委員長になったつもりになれるような環境づくりをしていこ
うということです。

 実験的防災訓練みたいなものをやってみると良いかもしれませんね。では神戸学院大学の皆さん、よろしくお願いします。

 
山本 俊貞さん 西金 秀記さん 

 
旧居留地連絡協議会 防災・防犯委員会の取り組み

 企業版「町内会」として、ビルオーナーをはじめ旧居留地内で店舗やオフィスを構える企業などで構成、近隣企業が親睦をはかり、協力してまちづくりを進めている。
 平成8年に協議会内に防災委員会を設置し(平成17年4月から防災・防犯委員会)地域での防災活動を行っている。

活動状況
・毎月防災・防犯委員会を開催
・事業所のための「防災マニュアル作成の手引き」の策定・配布
・「神戸旧居留地/地域防災計画(※)」の策定・交付
※ 地域防災計画
○ 非常時における旧居留地内企業の相互支援をスムーズにする
・各社における人命と財産は自社で守る
・不足する事柄について、相互支援を準備する
○ 非常時における来訪者を助ける
・人命を助ける(救護コーナーの設置等)
・一刻も早い帰宅、帰社を助ける
・帰宅困難者に対し、行政の態勢が整うまでの間、待避環境を提供する
○ 日頃から、防災意識を育み、訓練を怠らない
・防災訓練・防犯訓練の実施
・市民救命士講習会の開催
・啓発ビラの配布等、全就業への情報提供 等




高木





知事


赤穂


知事

高木

知事


高木

知事

高木

稲田

赤穂

知事


高木


防災に興味を持ってもらいたい!

 僕たち神戸学院大学学際教育機構防災・社会貢献ユニットでは「防災に興味を持ってもらいたい!!きっかけをつくりたい!!」を、防災教育の第1目標としています。防災をごく当たり前に考えられるように、きっかけづくりをしたい。そのために、僕たちは出前授業を行っています。地域の幼稚園や小中高で、様々な防災教育の教材を使い、楽しく防災を学んでもらっています。

 子どもたちだったら身体で示さないといけませんね。赤穂さんと稲田さん、避難所生活体験をしてみていかがでしたか。

 今までは語り部さんの話を聞くだけだったのですが、実際に体験すると、トイレは簡易トイレで夜も眠れず、冷たいご飯を毎日食べるという状況で、すごく辛かったです。

 ユニットで学んでいる人たちは何人位ですか。

 2回生から1学年50人位です。

 そうすると150人。随分なパワーですね。それで何グループ位に分かれて出前授業に出かけるのですか。

 出前授業に行く時は、基本的には有志を募るので、興味がある人が行くこととしています。

 年にどれ位行くのですか。

 僕は年に5〜6回です。

 私は、救命などの実習で講習会にも行くので、もう少し多いです。

 私も同じです。

 最初に防災への興味を引くためのきっかけづくりを目標にしているという話がありましたが、関心を持ってもらえますか。

 授業を行えば、関心を持ってもらえます。これを子供たちが家で話し、それが広がって、地域の防災力に繋がっていけばと考えています。

高木 洋輔さん  稲田 靖子さん 赤穂 智千夏さん

 
神戸学院大学 防災・社会貢献ユニットの取り組み
 
 ・ 法学部、経済学部、経営学部、人文学部の学生で2回生進級時に選択し選抜試験を経て進級する学際教育機構(学部横断型教育システム)
防災・社会貢献ユニット。
・ 大学と地域との相互教育により、防災を軸として危機に対する意識や専門性を高め合い、安全な社会づくりに貢献できる人材育成を目的とし、平成18年に開設。
・ 防災教育の教材開発や学生応急手当普及員による市民救命士講習の実施等の活動を行っている。

救命処置 応急手当普及員の資格を取得し、中学校・高校等で市民救命士講習の指導を実施 非常用持ち出し袋 災害が起きたら何が必要かを考えてもらう教材の開発
ぼうさいレンジャー 幼稚園向けの教材で、5人のレンジャーと地震を起こす悪者が出て来る。レンジャーが地震が起きたときどうするかを教え、それを悪者と戦う中で実践し、災害時の行動を学ぶ。







知事

大西




知事

西金




知事

高木



知事

防災コミュニティのネットワーク化を

 では、大西さんから、今後の抱負等を一言ずつお願いします。

 今の活動を継続して、さらに楽しさを加えながら、本当に災害時に対応できる適応能力のスキルアップを図っていきたいと思っています。今までは地域コミュニティが大事だと言われていたのですが、実際それだけでは災害には対応できないと分かってきたので、地域コミュニティの地域防災力のスキルアップをもっと図らなければいけないと思っています。

 ぜひ頑張ってください。それでは西金さん。

 住宅地では、皆さん顔見知りでお互い助け合うことは非常に重要で大切であるとわかっているのですが、業務地ではなかなか近隣の人とのお付き合いがない。業務地こそ、余計に隣近所のお付き合いが大切だと思います。今後も親睦に力を入れ、それが結局は防災にも役立つのではないかと考えています。

 次に神戸学院大学の皆さん。

 僕たちはスローガンのとおり「防災に興味を持ってもらいたい」ので、興味を引き出せるような防災教育の教材を作ったり、しっかりと次の災害に対応できるような人材を地域にも育成していき
たいと思います。

 活発に活動されている地域、グループの皆さんがおられるのに、意外とその情報が繋がっていない。
 私は旧居留地連絡協議会が、こんな活動を、こんなに密接にやられているとは思っていなかったのです。そういう意味では、もう少しネットワーク化するような仕掛けができないかと思います。そうすれば、お互いに不足する点を協力して補い合うことができる。せっかく量の確保ができているから、少し連携しながら質の確保に繋がればと思います。
 ただし一番の基本は日頃の防災意識と、それに基づく日頃からの行動です。それで防災訓練が重要だということになるのではないかと思います。
 皆さん方が、地域の防災力を高める活動を今後ますます積極的に展開されることを、心から願っています。
 今日はありがとうございました。頑張ってください。


井戸知事